[短編(オリ)]私の描くステータス式物語2

 スマホアプリ「マイステータス」。

 昨年、全OS対応で登場し、全世界、瞬く間に流通していった。もちろん初めは面白半分で登録する人たちも多かったが、これはまた意外と、的を射ている事象が多発する。

 例えば、学生の勉強。いくつかの質問に答えるだけで持ち主の得意不得意教科が分析されてしまう。社会人では、ストレスチェックや個人適正、隠されていた特性を掴むことにも使えると需要が高まり、これをリリースした会社の株はうなぎ登り。

 さらにさらに、情報を集めて、より精度の高くしたり、ステータス化する項目を追加するといったアップデートをする予定だという。

 さて、ここで問題がひとつ。ここまで精度が高いということは、これを基準のひとつにあれこれしたがる者が必ず出るのである。

 求人広告の条件にはマイステータスのアイコンがあり、「接客適正50ポイント以上」と記載され、アカウント登録には「攻撃性10ポイント以下」と。もっと身近に注目すれば、奥さんどうしのマウントの取り合いにも使われるようになった。

 まだ勉強という修行を知らぬ幼稚園児を眺めながら、コミュニケーション円滑性70ポイントだの、学者適正150ポイントだの。にこにことしながら口にするのだ。

 どうしてこうなったんだか。

 かくいう自分も、やむを得ず登録している。あらゆる項目で平均値とされているラインの一歩手前ばかりが、マイ、ステータス。もちろん個人努力で伸びたり縮んだりする。当たり前のことだ。マイステータスの運営会社も、いわく、

「これは、あくまで現在の適正などを表示するものであって、みなさんの未来を決定付けるものではありません。適正がないからといって諦める、あるいは適正があるからできる、と思わないでください」

 と散々注意喚起している。だが広告になんかにも使われるのは、利用規約にこうあるからだろう。

「甲の提供するアプリを用いて得た情報を、乙は自由に使用することができる」

 あくまでアプリの、数字なのだ。これには、何の意味も法的根拠もない。それでもこれにすがりつく。この世界は、そんなふうに狂わされてしまったんだ。

 あーあ、これさえなければ、リストラに遭うこともなかったのになぁ。

 高い空を見上げても、聞こえるのはMyStatusばかりだ。


◆◆◆◆


 目に見えるものほど、無根拠に信頼しがち、かと思います。手品と言わない手品なんてものも、その類いですね。


 それで、ステータス画面なんて言う要素を物語に、取り分けファンタジーに落とし込む場合、ゲームのような、と比喩されがちですが、これがあるだけでもファンタジーな世界なんて崩壊してしまうんですよね。

 数値というのは用意された縮尺があって、それの大小で競うのは人の生み出した知恵であり、ゲームです。生活をするためではなく、娯楽のための要素なんです。中には定量的にするためのものもありますが、ここでは無視しましょう。

 仮にそれを物語に織り込むとしたら、先述のようなステータス差別なんてものも社会問題になるでしょうし、主人公だけが見れるとしても、それは嘘っぱちだ、と疑いの目を向けられることでしょう。

 むしろ、そんなやつを読んでみたいな。「俺はステータスが見えるんだ」って言って不審者扱いされて、そこからどう生活していくのか……未来予知ではないからこそできるものがありそうな気がしてきましたね。

 安易にステータスだとか、パラメタ無限だとか。それを活かした物語=無双、ではないとは思うんですよねぇ。

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