[創作論]ゼンセノキオク

 満点。それは至高の数字。

「すごいわねぇ。技術点を除けば百点なんて!」

 成績表を母さんに見せれば、にっこりと微笑む。簡単だよ、と答えてみれば、通知表が待ち遠しいわね、とアイロンがけを再開する。

 母さんの言う、技術点、というのは、教師が感性で採点する、正解のない解答のこと。こればっかりは仕方ない。それでも三十点中二十はとれたのだ。すなわち、九十点。十分すぎる。

 それもこれも、前世の記憶のお陰だ。

 受験に失敗したと思ったら、また次の人生が始まっていたのだ。

 つまり、強くてニューゲーム、あるいは、●△でやったやつだ! 状態。そう、俺は二回目の人生を歩んでいる。つまり、同学年諸君たちが俺に勝つのは、不可能なのだよ!

 しかし不思議なことに、前世の記憶のうち、受験に失敗した以降の記憶が存在しないのだ。でもこのまま行けば推薦もらって、高校、大学に行ってビクトリー★ロード! 間違いなしっ!

 それにしても、だ。

 つくづく勉強勉強とうるさい親を立て続けに持ったものである。たしかに勉強できればいい会社に入れるもんだし、それで結婚して、子供を育ててなんて。

 中学生が考えることではないかもしれないが、記憶があるから、もはや三十代といっても差し支えない自分。

 まぁいいや。現世を楽しもう。テストの結果ももらえたし、早速、ゲームの時間だ。


◆◆◆◆


 死んでやり直しもの、あるいは前世の記憶アルンデスケドーなお話はよくありますが、こんな些細な「やり直し」をおもしろく書ける、というのもひとつの技量ですよね。

 決して同一人物としてのやり直しではなく、かつ同じ世界線。ここが大事です。


 このとき、やり直す動機といえば、破滅するだとか殺されるだとか。それを回避するためにー、というのがスタンダードですが、まだ世界の広さを知らない者がやり直すってなったとき、何をリプレイするのでしょう? しかも同じ世界で。

 大人になってから気づくことをリプレイして最善の結果を引き寄せる、なんてものはよくありますが、それさえも知らない未熟な子の後悔したこと。友達関係とか、引っ越しだとか……小さな世界でつまらないと思われるかもしれませんが、世界なんてそんなものです。

 世界なんてものは、個人という脳が外界の刺激を処理してるだけなんですから。


 同じ世界で、別人で。このテーマで是非とも自主企画で募集してみたいところですが、関係ないのが絶対来るんですよねぇ。読めよ、条件。

 異世界で、別人で。異世界で同一人物で。同じ世界で、同一人物で。違うんだよ、それじゃない。異世界に来たら好き放題するだろう? 同一人物だったら同じ扱いしてくれるから楽だろう? それらに該当しないテーマならば面白いものができるかもしれないと働きかけているのに。

 でも動かば面白きは生まれない。やってみましょうかぁ。

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