[短編(市場)・創作論]装備、買ってかないかぃ?

 どうしてそうなったの、と甘い匂いに包まれた空間にて、紅竜が尋ねると、

「いや、あんたが興味ありそうなものを仕入れてねぇ」

 近くにあった呼び鈴をつつく、義手の黒犬。ソファの上でくつろいで、いまかいまかと尻尾を振る。対する彼女、ラクリはつまらなさそうに脚の爪をコツコツと床にうちつける。

 間もなく、二人の密室に入ってきたのは背筋をぴんと伸ばした人間の女性で、折り目正しく二人の間の机に、持っていたものを置いた。

「銃……最近騎士たちが導入をしてるやつね」

 正解、と答えながら手の甲を舐める彼女は、下がっていいよ、と遺産を持ってきた女性に告げる。

「でも、あんたに見せるからには、ただの銃じゃないよ。引き金を引くと、魔法を発射できるっていう、貴重品さ」

 苦労したよ、と笑うヴィーク。だがさして客人は興味はなさそうに目を細めていた。

「あいつに見せたら、高く売れそうね。嵩張るから私はいらないけど」

 柔らかい布に包まれたそれを、軽くヴィークの方へ押しやる。

「一発くらい撃ってみてからでもいいんだよ? あと、これに弾は必要ないって言ったら、どうする?」

 ふわりと尻尾が揺れる。ともすれば立ちあがり、その遺産を手に取ったラクリは、使い方を尋ねる。

 しばらく後に、パン、と破裂音。続けて呼び鈴の鳴動が三回。

 誰もいない方向に放たれた、銃口から飛び出した水は、床も壁も、派手に水をたたえていた。

「……込める魔力間違うと、こうなるんだね。買わないかい?」

 今度は数人の者たちが現れて、その手には掃除道具が握られている。

「……考えとくわ。いくら欲しいの?」

 寝そべっていた体を起こして、そうこなくちゃ、と黒犬は笑みを深くする。ラクリは銃をもとの場所に戻し、席についた。


◆◆◆◆


 RPG系小説では武器でパラメタがどうこうというメタ要素がありますが、正直、数値で全てが決まれば世の中もっと簡単ですよね。


 力が99あっても素早さ50に負けるとか、そういう要素があってもしょうもないし、究極のところ、ゲームでないところに数値はいらないですよね。

 素晴らしい出来のRPGを遊んでみてくださいよ。町人が「いいステータスだ!」とか、「魔力50はある人いないかなぁ」なんて言います? メタ発言をネタにしたゲームならいざ知らず、真面目なものでこれをやられると興醒めですよね。

 見方を変えると、そういうRPG系小説は全部、ゲームなんでしょうね。そこにいるのは全員がNPCで、数字を眺めて一喜一憂するような世界。1違えば全てが変わる世界。

 そんなルールに縛られるなら、いっそのことパズルでいいんじゃないでしょうか? 物語もロールプレイングも、いらないのでは?

 そんな物語を、求めていきたいですねぇ。もちろん、私が書くものも。

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