[短編(市場)]男二人の共同作業

 市場のある広場にて、者達が集まり、絶えず掛け声が飛び交っていた。

 その一角、おそらくは装飾か何かに使うのであろう部品を地面に置いて、彼らは言い争っていた。

「だーかーらー! そんなはめ方したら、遺産が傷つくってば! もっと丁寧に扱えって!」

 ビシバシと尻尾を鞭のように打ちながら、前足の爪で指差すのはサンバイザのような帽子を被る四脚類の竜。

「ならおまえがやれ! 遺産の扱いなんて知るか!」

 対するのは胡座をかきながら、遺産のパーツだろうものを両手に持つ土竜。その近くには陽に当てられて輝く小さな宝石がある。

「立脚のくせに、そんなこともできないのかよ。宝石店の店主が聞いて呆れるよ」

 わざとらしいため息に、舌打ちがひとつ。

 富豪が別荘を建てるために集められた彼ら。畑違いの分野を商売としているものの、施主の思い付きで、街灯となる遺産に宝石を散りばめたものを敷地に飾りたいという要望を叶えるために二人、もとい異なる分野の専門家が呼ばれた。

 青は、遺産の部品のどこになら石を取り付けられそうかを考え、茶は自前の宝石を取り付けて、輝かせる。彼ら以外にも二人一組があちこちにあるが、顔見知りということもあり、二人は即座にコンビを結成したのだった。

 そして必要なものを集めて、いざ当日。作業を開始してまもなくのことである。

「そもそも、だ。リエード、なんでもう光ってる街灯をさらに光らせる必要があるんだ」

 僕に聞かれてもねぇ、と目を細める青が遺産の部品に足を伸ばし、引き寄せる。

「富豪の考えることは、俺には分からん。どうせ顕示欲なんだろうな」

 次の部品を引き寄せて、器用に組み合わせる青は、そうだろうね、と相方に示す。

「ほら、ここに石をはめて、その上に持ってるやつをはめてくれよ」

 茶の持つ透明な遺産と、青の作ったそれを覆うような部品がひとつになる。カチッと音を立てると、それらはバラバラになることはなかった。

「ほんと、給料がいいから参加しただけなんだけどね」

 まったくだ、と近くに転がる部品を拾い上げ、これはどこだ、と静かに尋ねる。


◆◆◆◆


 そういえば、この二人だけのシチュって全然ないよなぁ、と思いまして。


 本編でこの二人のやりとりがあったのって、エルディが来たときくらいでしたっけ。一応、ラクリさんが行方不明のときにあれこれとやりとりしているのですが、書いてはいないですね。

 ラクリさんとシェーシャはちょくちょく書いてたりするんですけどねぇ。どこで差がついたのやら。

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