[短編(市場)]変温たちの暮らし方

 パチパチと炎が踊る。燃料は、少しでも減ればくべられる。絶やしてはならない、といわれている光源は黒い煙を吐き出しながら、天井に続く廃気孔へと手を伸ばす。

 その管理をしているのは淡い青色をした四脚類の小さな竜である。隣に大量の薪などの燃料の入った箱にあごをひっつけながら、横になっている。

「寒ぃ」

 はたから見れば、たまたま通りかかった生物が、うっとりと箱にへばりついているようだが、れっきとしたここの住人である。

 雪の国に生息している竜は、基本的に体が小さい。市場にいるものよりもふた回り以下の大きさ。特に四脚類は顕著だ。

「今日は一段と冷えんね。寝るときは気を付けんと」

 体を震わせながらぼんやりと照らされ始めたのは、対照的に巨体の四脚の獣。

「暖気を溜めとかんと。背中で寝っか?」

 もこもことした体に熱気を当てながら尋ねると、そうする、と竜は箱を器用に上り、薪を炎へ。一瞬だけあたりが暗くなるが、すぐにもとに戻る。

「ほれ、あとはわしがやる。いちんちおつかれさん」

 ふわりと振られた尻尾が箱の前に。竜は小さな体でそれに飛び移ると、器用に毛皮を掻き分けて背中に陣取る。

「冷えとうね。危ない、危ない」

 息つく相方に肝を冷やす獣はゆっくりと箱の横でくつろぐ。聞こえ始める寝息に、大きくあくび。

 まだ陽が落ちたばかり。少しでも早く、温もりが訪れんことを。


◆◆◆◆


 変温生物といえば、暑いところほど体が大きく、寒いところほど小さくなる傾向があるそうな。恒温は逆に、寒いところほど大きく、暑いほど小さくなるとか。


 変温って、外界温度に影響されやすい生物な訳ですが、熱帯とかだといくらでも熱を得られる。だから体を大きくして熱を保有することができ、一方で外敵も減るというメリットがあるんですよね。

 小さいとすぐに熱を得られるので、活動をすぐに始められる。寒い時期は冬眠することでやり過ごす。というふうになってるのでしょうか。

 一方の恒温は逆で、寒ければ大きい方が熱を保温できる。暑いと小さい方が放熱しやすい。

 そういったことを考えてると、ネタがまた降りてくるような、ないような。ファンタジーの変温は、不思議と巨体が多かったりしますよね。どうしてそうなってるのか考えてみると楽しそう。


 さて、一昨日から急速に冷えましたね。

 コロコロもまだ片付いていないことも含め、ちゃんと保水しながら、気を付けましょう。

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