[短編(市場)]観衆集めたるは

 人だかりができていた。世界樹の根本に最も近い広場で、昨日、設けられた特設舞台を取り囲むようにして。十数人が余裕で立つことのできるだろうそれは、騎士と大工が早朝から深夜まで動き回って完成させたものだ。

 舞台の周囲には騎士が佇んでおり、観客の侵入を妨げている。もちろん、観客も背伸びしながらまだか、まだかと叫びあっている。

「……多いですね」

 目の前の群衆に、うんざりとした視線を向けるのは兜で顔を隠すインスである。だが目の前に張られている規制線のおかげか、市民には一切聞こえていない。

 大衆の外側には一般通行人。なんだ、とステージに目を向けるが、道端にある臨時の露天を認めるやいなや、興味を失ってすたすたと行ってしまう。

 今日は各地のアイドルが一同に介するイベントの日。陽が隠れるくらいから始まる予定である。あと少し。

「……タマモも来てるのかな」

 坊っちゃんも一緒にどうですか、と満面の笑みが青年の脳裏を掠める。だがいくら眺めても、目の前には立脚類の群れがあるばかりだ。

 やがて、舞台袖に備え付けられたいくつかの遺産が鳴動を始める。舞台をどんどんと揺らし、空間へと音を放出する。

 応えるように歓声が上がる。そして、バタバタと舞台を踏みしめる音。

「みんなー! 今日はヨロシクねー!!」

 インスたちの後ろに躍り出たのは人間の少女。ジャラジャラとアクセサリを鳴らしながら観衆に手をふりはじめ、大衆からも諸手が上がる。

「じゃあ、一曲目、いくよー!」

 遺産が、また違った空間を彩り始めた。

 ふとインスの視線がある一点へ注がれる。道沿いの建物の、テラス席に四脚類の姿があるのだ。

「……耳がいたくなりそうですね」

 でも仕事だから、と続けて、背筋を伸ばす。


◆◆◆◆


 そういえばアイドルとかいないんですよねぇ。必要なければ書く必要もないですけれども。正直、アイドルとか全然興味湧かないので、そんなのがいるんだ程度の知識しか持ち合わせていません。


 ファンタジーにおけるアイドルってなんでしょうか。宗教の司祭とかですかね? あるいは信仰対象である神様。

 答えてはくれないけれど応えてくれる。それが啓示だと信じて振る舞うのも、一種のアイドルへの執着のように思えます。

 多種多様な生物のいる市場の世界では、多分専門誌があると思います。出入り口あたりで購入できると思われます。

 海獣アイドルユニット……どうなるんだろ。

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