[短編(オリ)]ギャンブラー

 ダイスが投げられた。美しい弧を描いた玩具はカッ音をたてて着地する。そしてコロコロと転がりピタリと停止して、上を向いた面にはひとつの数字。

 一瞬の静寂のあと、悪態付く者からもろ手を挙げて笑みを浮かべる者など、様々な反応を示し始めた。そしてダイスを投げた者は微笑みながら、手元にあったチップを移動させ始める。

 だが終始、眉ひとつ動かさない者が一人いる。目の前に寄越された、賭け金の倍となったチップの山をじっと見つめるばかりだ。席を離れる者もいるなかで、次の勝負を見据える。

 ダイスを拾い上げ手に隠したディーラーは次の賭けを開始する。どこにいくらをかけるのか、はたまた当選者人数に賭けるのか。参加者たちを囲む野次馬たちの視線は、像のように動かぬ彼のもとへ注がれている。

 彼以外がチップを出し終えた。先の大当たりを引いた彼はにやりとして、卓上の全てを差し出した。もちろん、外野は盛り上がる。

 ディーラーがダイスを手の中で転がす。宙へと飛んだ玩具がくるくるすとんと舞い落ちる。数多の視線を受けたそこに、人々は沸いた。


◆◆◆◆


 一時期、ギャブルという賭け士キャラを考えていたのですが、ふと思い出しまして。


 賭けって娯楽の一種とされていますが、運を天に任せる、という意味では思想がよく表れるものなんじゃないかと。まず、思想を犯すものを使うことはできませんよね。

 木を信仰しているのに、枝を折って倒れた方向に賭けたら勝ち、とか。

 女性は長い髪、男は髭であるのは原初の神の姿をなぞらえている。なら数筋を結んでアミダくじなんてもっての他。

 だからこそ公平性の期待できるトランプとかができたのでしょうか。ボードゲームよりも運の絡む駆け引きが好まれたりとか。


 で、勝負といえば物語のエッセンスですが、お互いの信条を害さない賭け(勝負)って存外、難しいのかもしれません。

 例えば命なんて賭けるもんじゃないとする敵がいたらどうしましょうか。特別憎いやつでもないやつと雌雄を決する必要があるとき、どうやって決めましょうか。かといって相手に決めさせると自分が不利になるかもしれない。

 こう考えると、面白いと思えるよう、ゲームのルール作り、ちゃんとしないとなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る