[創作論]ニックネーム
「リーィールぅ!」
リ、のあたりから聞こえ始めていたそれはどんどん大きくなってきていて、どこから聞こえてくるんだと耳に意識を向けた。
ィ、で方向がつかめた。背後、しかも上空。僕をそのように呼ぶのは一人しかいないから、誰なのかは容易に想像がついていた。
最後の一息で彼女の姿を認めれば、空からはみるみるうちに大きくなっていく彼女の姿。
逃げることも叶わずに、その翼による一撃は、首のあたりにまっすぐ飛んできた。とても痛かった。ぐわんぐわんした。
で、彼女は少し先に着地して、もっそもっそと近づいてくる。もう一度、リィル、と呼んでくる。
草原を歩いていた僕は彼女、山飛竜のシェーシャに襲われた。なんでも、飛んでいたら見つけたの、とか。いや、なら翼で襲わないでほしいんだけど。
「どうしたんだよ。暇なの?」
笑いながら、見つけたから、と答えられる。なら声をかけてから走ってくれる方が、心の準備ができたんだけどなぁ。そんなことを考えていると、同じことを訊いてくる。
朝から彼女と喧嘩しちゃって、なんて言えるはずもなく、散歩だと伝える。すると、ついていっていい、と明るく、目を輝かせて尋ねてくる。別に構わないけれども。
それから適当に草原をぶらついて、ふと訊いてみる。
「そういえば、リィルって、どこをどうしたらそうなったのさ。特に、ル、ってどこから」
初めて出会ったときに自己紹介をしたが、何度か首を傾げながらリエード、と呟いていた気がする。そして、じゃあリィルで、と断言されたときは別にいいと考えていたが、よく考えてみればそこに、ィ、さえもない。イトスにはあるけど。
「えー? どうしてだっけ? 忘れちゃった」
それはないよ。気にしてても仕方ないんだけどさ。
「でも、エードってとこが、もやっとしたのは覚えてるんだけど」
もうそれでいいや。ルのありかは所在不明ってことでいいや。そういえばギルが、あだ名で呼ぶのは僕くらいって言ってたっけ。
シェーシャと親しいってことで、いいよね。
◆◆◆◆
親しみを込めて略称で呼ぶこと、ありますよね。市場の微修正中、「リィル」の呼称を「リエード」にしました。
ストーリー中、大きく関わらないので問題がないことと、なんでそうなるっていう読者のつっこみを回避するために。
で、このニックネームがあったことを残すために、上記短編を。振り返ってみると、この二人の絡みってあまりないんですよね。
話を戻しまして、ニックネーム、あるいは愛称。作中の関係性の発展や、物語開始地点での交遊を示すにはいいパラメータになりますね。
その代わり、読者には「それが彼である」という結びつけの切っ掛けを用意する必要があるんですよね。特に文章では、はっきりと明示しておかないと、ニックネームを持つ新キャラが出てきてしまうので。
しかも読者に、この名前二つは同一人物である、という情報の保持を求めてしまうため、下手な乱用は避けるべき要素なんでしょう。
けど親しくあってほしいと考えると、ニックネームで呼んでほしいなー。何かいい方法はないですかねぇ。
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