[日記]画面の前で、椅子の上で

「こちらこそ」

 小さく言葉を交わすのだった。


 それが終わりの言葉だった。無意識のうちに張っていた緊張が緩み、なんとも言えないだるさが込み上げる。

 椅子の上で、背もたれに体重を預ければ、軽く天井を見上げれば、自然とため息が漏れる。

 彼らの、彼女の迎えた結末。私の描いた結末。全てがうまくいったとは言い切れない。だがなるべくしてなった物語。ここからは、もう描かない。

 最後にもう一度、気になっていたところを拾い上げて、確認する。これでいい。投稿ページに張り付けて、青いボタンを、クリックする。

 投稿完了画面。28万文字の文字。

 ツイートする。最終話を、新しく公開しました。

 「世界樹の市場」が完結した瞬間。あとはあとがきを追加して終了だ。明後日、さくさくと書いてしまうつもりだが、はたして、書けるのだろうか。

 三年半の長すぎる月日を締めくくり、終えることができるのか。いや、一つの区切りとしてこれもまた描くのだ。

 次へと進むために。


 そして、目的は少し違うけれども、また君たちと一周しよう。足を進めるのではなくて、これまで歩いてきた道を、標を確かめる旅。

 また、君たちと歩きたいから、歩き続けたいから。


◆◆◆◆


 昨日、また一つの物語が終わってしまいました。

 始まりは、たったの三人しかいなかった世界に、世界樹が、市場が、外が生まれ、彼ら彼女らがそれぞれの生活を行い、一つの物語を彩りました。

 私は紅と青だけの書き出しから成長できたでしょうか? 当時から大きく変わったことは、あるのでしょうか。

 そんな疑問を、思い浮かべながら、じっくりと、今日の完成への一歩を、踏み出します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る