[短編(ネタ)]知らないと、思ってる?
食べたくない。
食卓にて起こった、定期的な反抗期。
「どうしたの。早く食べないと、冷めちゃうよ?」
皿を見やると、盛られたままのステーキ。一口もしていないようだ。怒ってないふうを取り繕いながら、どうして、と我が子の顔を覗きこむ。
「牛さんが可哀想」
口を尖らせながらの言い訳に、あぁそういうことを考えた友達がいたのだな、とすぐに分かる。ただ食べるということに関心を持ち始め、自ら考えるようになったのだと思うことにする。
「そうなの。けど、牛さんのお肉食べないと、ポイしゃうよ? ポイしちゃうのと、食べてあげるの、どっちが可哀想だと、思う?」
私も母に言われた言葉を真似る。ただ生きるために必要なことなのに、布団を被って必死に悩んで、ヤダヤダと食べるのを拒否するのだろうか。
「どっちも、可哀想」
そうきたか。どちらも選ぶし、選ばないと。
「じゃあね、牛さんのどういうところが、可哀想だと思ったの?」
相手を思いやる気持ち。それは大事にしてほしい。けれど、本当に、そこに相手がいるのか、考えさせることが、多分、必要なことだと思う。
「食べちゃったら、牛さんが可哀想」
そう。牛という生き物と、目の前にある加工された肉が同じものだと考えてしまう。誰もが通る道なんだろう。
「でもね、牛さんは、食べてもらうために、お肉になって、ここにいるんだよ? 食べてあげずに、ポイしちゃう方が、お母さんは、可哀想だと思うな」
むしろ、もったいない。そう思うようになるのは、あと何年かかるだろう。
「違わないよ。需要と供給って、知ってる?」
うん?
「牛さんのお肉を買わなかったら、お肉が売れなくなったら、需要が減って、お肉の供給も少なくなるんでしょ? だったら、牛さんがお肉にならなくていいんだよ。知らないの?」
あー、いらんこと吹き込んだやつがいるな、これは。
「あのね、クラスの皆で決めたの。お肉も、お魚も食べないって、決めたの。ここから、世界が変わるんだよ!」
満面の笑みに、悪気は全く感じない。むしろ誇らしげだ。んー、これはPTA案件かー?
◆◆◆
というネタでした。
どうやって諭すのか、ガンバレ親御さん。
こういった外見、年齢とのギャップを題材にしたお話はよくありますが、一発ネタになりがち。そもそも、「こういうの面白いかも」と思い浮かぶシーンが短編なので、長編に向かないんですよね。
ギャグベースなら思い付く限りやってしまえばいいんですけど、ね。
需要と言えば、投稿した作品についてほしいですよね、需要。供給がいっこうに追い付かない未来が見えますけれどね。
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