[短編(オリ)]欠損部品の取り扱い

 右腕が軋む。メンテナンスをサボったツケというやつだ。義手というのは、なんとも面倒くさい。

 事故でここを失ってもう20年。すっかり生活には慣れてしまってはいるが、メンテナンスの習慣だけはどうにも身に付かない。

 まず、外装を外す。すると筋肉の代わりに鉄線と基盤が覗く。んでもって、錆び付いたり断線しかかっている箇所がないかを探る。この感覚が好きにはなれないのだ。

 例えるなら、生身の腕を自ら切り開いているような錯覚に陥るから。

 皮膚を取り除き、薄い脂肪と筋肉を切り分けて、血管が切れていないか、肉をかき分けて確認していくようで。しかも、それを自らの進んでやっているというのだから、気持ち悪さが際立つ。

 定期的に交換を行うこともできなくはないが、費用が凄まじい。それだけあれば何年生活できるやら。しかも、最近の技術革新により数ヶ月前に使えた部品が生産停止したりするのも当たり前だ。あっという間に大半の部品が手に入らなくなるのも珍しくない。

 はぁ、メンテ不要の義手とか、元の腕が生えてくるような方法とかないものか。ともかく、考え事をしていても軋みが煩いので、外装を外そうとソファから立ち上がる。メンテドライバーとオイルはどこだったか。虚像を作り出さぬよう素早く行動を開始する。


◆◆◆◆


 義手の主人公といえば、某錬金術漫画を思い浮かべる人が多くいるのではないでしょうか?


 義手って機械ですからね。メンテをしなければ錆び付いて使えなくなってしまう。しかし己の持っていたものを思い浮かべてしまう癖がそこに介入するとどうなるでしょうか?

 自分で自分の体を切り開いているような感覚に襲われて、それはもう正気でいられないことでしょう。ある種のホラーなのでは。

 しかし、腕を失ったトラウマと、虚像をイメージする癖、前述の主人公は後者が勝っているように書きましたが、トラウマの方が強いのが一般的なんでしょうか?

 こういうのはイメージ力の問題かもしれませんが、あなたならどう書きますか?

 なんだか右腕の付け根がむずむずしてきたので、今日はこれくらいにしておきましょう。

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