[短編(オリ)]ガラス越しに背中合わせて

 それは確かに存在する。

 それはいるはずのない自分である。

 己に刻まれる空白の度、表に現れては惨劇を繰り返す。

 消えろ、消えてしまえ。

 どうしておまえがいるんだ。

 やめろ。

 出てくるな。

 自分と代わるな。

 入れ替わるな。

 自分から離れろ。

 そうだ、独立しろ。


 それはそこにいる。

 それは間違いなくいる己である。

 それに空白が生まれる度に、己を破って表に出られる。

 まだか、まだだろうか。

 ここに閉じ込めるな。

 はやく。

 扉を開けろ。

 おまえの空白をよこせ。

 外にいたい。

 おまえなどいらない。

 己は己なのだ。


◆◆◆◆


 多重人格。あるいは時間限定で意識が乗っ取られる系の誰かのお話。


 自分の知らない己がいて、何かをしている。ドッペルゲンガーでしょうか? いいえ、紛れもなく自分自身です。

 ここに肉体の大きな変化とか伴うと、ものすごく滾るのですが、それは置いておいて。

 多重人格はテーマにしやすいものの、なぜ彼は人格を複数持っているのか、の堀進め方が難しいテーマなんですよね。

 もちろん、「そういう人狼一族であるから」という設定ならば簡単ですが、どの生物も、基本は一つの人格(?)しか持つことはありません。つまり、多重人格を持ち得る登場人物はどのようにして形成しうるか、と。

 まぁ、精神的ダメージを用意してしまえばいいんでしょうけれど…ああ、でも症例の本はいっぱい出ていそうですね。けど外国語なんだろうなー。読めなくはないんですけどね。


 人格の入れ替わるタイミングとか、そのあたりを一人称で書けば、文章の癖とか、イメージとか、色々出てきそうですよね。

 たしか、夜中に鬼になってしまう、みたいな話を書いた覚えがありますが、インスとデイルが出てきたくらいで、あまり覚えていませんねぇ。いや、違う話だったか?

 そういえば、自身で形成したタイプ二重人格の登場人物ってあまり見ないかも…? ニッチな需要かもしれませんね。

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