[創作論]忘却との戦い
彼の者は確かに実在した。
世界の支配を目論んだ彼は、こう宣言した。
我は世界の王となる。そして、この世界を神に明け渡すのだ。
無論、それを聞き付けた人々は、そうはさせるかと何度も挑んだ。やがて、多大な犠牲を払い、世界の王を名乗った、魔王を討ち滅ぼした。
魔王の口にした、神という存在が何だったのかは分からない。今や知るすべはなく、かつ、伝えるものもいない。
「まずは、一人目の幹部だな」
焚き火に照らされる、四人のうちの一人、剣士らしい者が真剣な眼差しを仲間に向ける。
「ええ。伝承か何か、残っていればよかったのですが…声しか現状、分かっていないんですよね」
剣士の正面にいる魔法使いは首を捻る。
「誰が幹部か、は分かるが、どんなやつかは、誰も知らない、か。先のパーティに同行した視察隊も、帰ることもできずにやられたみたいだからな」
魔法使いの右手にいる、武道家は腕を組み、うなる。
「しかも、根城の構造も分からない上に、見張りもいなとな。不気味なもんですな」
三人の中でも浮いている賢者らしい老人がフォフォと笑う。
「やるしかないんだ。頑張ろう。生きて、帰ろう」
全員が静かにうなずいた。
◆◆◆◆
そういえば、敵に関する情報って、かなり重要なんですよね。
味方が有利になる条件を整えることができるし、敵の有利になりうる条件を予測することができる。
すなわち、事前情報のある魔王ほど手が打ちやすいということです。
伝承や童話など、事前情報となりうる候補はいくらでもありますが、それらを徹底的に風化させてみればあっという間に窮地に陥らせることもできるわけで…
恋も戦いも、相手がどうであるのかを知っておくことで有利になるのですから、色々と用意しておくと展開の選択肢を増やせていいかもしれませんね。
矛盾してはいけませんが。
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