[短編(オリ)]筆者の隠したお宝探し

歩道をゆく人も、アスファルトを滑る車内の人も、誰もがふくよかだ。決して情けないというわけではなく、外気から肌を隠し、冬の冷気から耐えているのだ。

吐く息も白く、吸い込めば肺の熱を奪う。今年もまた、冬の季節だ。

そんな中、並んで歩く二人の男女が歩いていた。お揃いのマフラーを首に巻いて、湯気が激しく舞い上がる紙コップを、女性は両手で、男性は片手で持っている。

「寒いよね」

女性がマフラーから埋めていた顔をあげて、一口。

「冬が来ちゃったからねぇ」

彼は口を冷気にさらしながら、にこにことしている。

「今年は雪、降るかな」

ぶわと広がる白い煙の向こう側、静かに、近くに見える空を見る。

「どうだろうなぁ。去年は全く降らなかったんだっけ」

男性がカップを持ち上げ、水を飲むように口に含み、飲んだ。

「そうそう。豪雪の予報があったのに全く降らなくて、スコップが無駄になったんだよね」

あったあった、と笑みを浮かべた男性。

「おかげで親が車のチェーン着けるのに苦労したのにってぼやいてたわ」

なんで降らなかったんだろうね、と女性。

「温暖化ってやつのせいなんじゃないか? 寒いけど」

夏は暑いくせにね、と女性の視界に、ふと男性のカップを持つ手首が入った。飲み物が溢れたのだろうか、親指の爪程度の大きさのシミができていた。

たまたまだろう、と特に気に止めることもなく二人は道を歩んでいった。


◆◆◆◆


ここで問題です。

「この話の中で違和感のあるところはどこでしょうか」


今回は伏線のお話です。

難しいですよね~。謎を謎として提起しておいて、後から説明をする、というのはやりやすいですが、露骨すぎたり、繰り返しすぎたりするとネタ切れ感がにじみ出てしまうでしょうし…

書き方として、謎提供パターンと、矛盾パターンがあると思います。


提供パターンは前述の通りです。カードを見せてはおくが、カードにある意味は分からない。

矛盾パターンは、あらゆる出来事の中から事実を結びつけていくが、その中で発生する矛盾。某弁護士ゲームはこれがよく使われている気がします。

どちらにせよ、全体を見渡して構築する必要があるため、行き当たりばったりだと作りづらい。この伏線なんだったの? という回収も忘れてはいけませんし…、回収するきっかけに矛盾があってもいけない。


私はできているんですかねぇ。市場はあまり深く考えずに書いているのでないのでは?(知らんがな)


さて、冒頭の問題の答えです。

まず、二人が持っているのはあっつあつの飲み物です。男性がぐびっと飲みました。猫舌でない可能性はありますが、もう少し警戒するはずですね。

もう一つは、男性の服のシミです。そこまで大きければ皮膚にあっつあつの飲み物が到達し、反応を見せるはずです。女性は今気づいたことを考えると、出会った時点では気づいてなかったし、道中についた可能性が高いということ。


いかがでしたでしょうか。

まだまだ訓練が足りませんね…

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