[短編(オリ)]もしもし、パラレルの私ですか?

突然のいたずら電話。正しくは、留守電。

このあとに、何が続くと思う? ヒントは、「時間切れ」。

……

1話3分しか電話かけられないから、メッセージ残しとくね。

インスタント麺かよっ!特撮ヒーローかよっ! ってつっこんだ。で、そのあとに名乗ったの。私の名前を、私の声で。

いたずら電話にしては、意味わかんないから、とりあえず最後まで聞いてみたよ、そりゃ。

私ね、もうすぐ人間やめるんだ。そしたら、皆を守るために戦争に行くんだ。そっちの私は、戦争に勝てた?

もう、ワケわかんないでしょ? 戦争とか…今いつだと思ってそんないたずらしてるのか。それに、人間やめるって、神や仏にでもなるのかっての。


私ね、怖いの。

そう口にしていた。

神様にお願いしたの。

戦争に勝てるように?

私で戦争が終わるように。

人間一人でそうなるものか。

終わってしまえって考えれば。

もっと、戦争はでかいもんだろ。

勝つぞって、力が湧くと思うから。


留守電なのに、妙な間のある言葉に、答えずにいられなかった。

なんだそりゃ、笑っている隣の友達に、その言葉を、口にすることはできなかった。

なにかが壊れそう、とかそんなんじゃなくて、口にしてはいけない気がしたのだ。パラレルの私は、今どうしているのだろうか。


1回だけ、もう一人の私と、話して、みたかったな


そう、言い残して留守電は切れたのだった。画面を見れば、知らない電話番号に、ぴったり3分。改めて、1人になってから耳に当ててみたが、再生のボタンを押せなかった。

代わりに、削除、のボタンを押して、二度とその声を聞くことはなかった。


◆◆◆◆


if展開ってものがあるじゃないか。

それをパラレル、と表記することにします。決してifというワードが嫌いなのではなく、入力切り替えが面倒なだけです。


この筋書きで、主人公がこちらの手を取った場合…とか想像すること、あるあるだと思います。かくいう私も「溢れ、蝕み、食らいつき」のパラレル版をピクシブに投稿しました。成人向けです。

ゲームだと、取り返しがつかない選択肢で分岐したりとかよくあることですね。最近だと周回プレイで解消したり、終盤のみに配置することでコレクションを楽にしたりと工夫が見られるわけですが。


さて、しかし文字や漫画で物語を描くうえで、パラレルルートというものは存在し得ないものです。なぜなら、作品はそこで完結しているからです。

それでも、そこに思いを馳せてしまうのは、ファンどころか作者も同じです。不思議ですね。


ところで、パラレルルートって、「本筋に選ばれなかった物語」に過ぎないんですよね。作者も右往左往して決定したのかと思うと、顔がにやけますね。私だけじゃないんだ、と。


もしかすると、想像するという行いがパラレルを生み出していて、私たちも誰かのパラレルなのかもしれませんね。

そういった概念が、どこまでの生物に通用するとか考えると面白味が増しそうですねぇ。

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