[短編(市場)]おごりおごられ

倉庫のような空間に日が差し込む。光を後光に立つ影が一つ。人間ではない膝折の竜で、何も言わず、警戒する様子もなく歩き出した。

ひたひたと扉を閉じることもせずに、中央の辺りでぐるりと辺りを見渡す。物はあまりないが、掃除は行き届いているらしい。大した汚れもない。

ひとまず、竜は炊事場らしい場所の近くの床に座り込んだ。懐から本を取り出し、少ない光源を利用しながら繰り始める。

間もなく陽が沈むだろう頃、竜の入ってきた方向とは反対側からガチャギギギと音。そこから現れたのはたくましい身なりをした竜である。

「ん、ずいぶんと早かったな。シェーシャはトレムのやつと帰ってるし、暇だったろ」

彼はすぐに、先客に気がついた。別に、と答えた先客はのそりと立ち上がり本をしまう。

「で、何よ。突然、ご馳走するとかなんとか……気持ち悪いんだけど」

にらみをきかせる赤い先客。土色の主はそういうなよ、と汚れた手で自らの首に触れる。

「この前、シェーシャが一人でお前んとこ行ったって聞いてな。どうせ暇だからってそっち行って、飯をたかってたんだろ?」

あぁ、と思い出したらしい赤。

「むしろ、私があげたんだけどね。もらえるものはもらうけど、変なこと考えないでよ」

変なことってなんだよ、と主は問いかけるものの、赤は振り返り、さっさと行きましょ、と歩き出す。首をかしげながら必要なものを身につけ、追いかける主は何度か首をかしげるのだった。


◆◆◆◆


ギルの恋人はシェーシャだけだから、変なことにはならないとオモウンダケドナー。


彼女は何かとそういう部分を意識しているような場面をちらほらと入れていたと思うのですが、実際はどうでしたっけ。今の場面に入って、既に一年経過しているので正直思い出せないですね。

こういう、何でもないやりとりを書いてるとニヤニヤしちゃいますね。楽しい。

もっと別のことを話題にしようとしたのですが、それはまた明日にしましょうか。ええ、ええ。

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