[創作論]歴史のフィルタはきめ細かく

博物館に来ている。

ひんやりとした静寂の中、そこには物言わぬ物体が陳列されており、いずれも、箱に守られたまな板の上の鯉。されるがままでこそあるが、この静寂が破ることを許さない。

絵。偶像。農具。道具。書物。

どんな生活が営まれていたのか。どんな水準の生活だったのか知るにはいい機会だ。

貴族。平民。奴隷。商人。

かつての人々の歴史の一幕は、こうであったという物語を提供してくれる。好きでも嫌いでもないが、いつもと違うものがいつでも見れるのは、ありがたい。

しかし、ここには現れない史実は、どれほどあるのだろうか。いわゆる、葬られた歴史だ。

誰にでも生きていた時間があって、ただ生活をしていた人たちがいて、生まれ亡くなった者たちがいて。

そんな子細なことまで明記していたら、世界中の木がなくなってしまうことだろう。いや、きっとそれ以上の何かが起こるに違いない。想像が及ばない。

それでも、誰かは、きっとそこにいたはずだ。


◆◆◆◆


博物館に、行ってません。過去に見たものを思い出しながらつづりました。


物語には主人公がいて、周囲にも誰かがいて、事件があって、終息する。そこに描かれない者たちがいて、彼らも何かをして生きている。

そんなことを匂わせるには、どうすればいいでしょうか。

簡単なのは、風景に描き、名残を残すことでしょう。日常ならば気にも止めない景色。事件があったならば、その当事者たちはどうするのか。主人公が取り巻きの一部となっていてもいいですね。

ただ、主人公に事件が起こった場合、どうしても彼に視線を取り上げがちになってしまうんですよね。周りでは変化が絶えず起こっているはずなのに…。


また、記されていない歴史には、個人の他にも都合の悪いもの、というのもあるでしょうが、これはまた別の機会に…。

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