[日記]熱も引けば雨天となりて

 瞼を開いて現れる世界は、どこか緑っぽいような、暗い雰囲気に包まれている。

 明るいことは確かなのだが、暗い。陽の光は分厚い雲によってエネルギーを奪われて、なけなしの光を大地に届けてくれているのだ。

 朝自宅を終え、玄関を開く。光と熱を妨げる力は強いくせに、大地を潤す力は半端者らしい。降ってこそいるが、傘を指す必要性があるものかと首を傾げる程度。

 だがしつこいくらいに存在をアピールしてくる雨滴が嫌いなので、私は傘を開いて出発する。

 窓ごしから見える曇り空の景色がどことなく緑っぽいのはなぜだろう。気のせいなのか、あるいは苔や植木が存在をアピールしているからなのか。

 空を見上げれば灰白の厚い雲が見えるし、視線を正面にやれば緑っぽさはない。至って普通の道だ。見下ろしてみると先日の豪雨の残骸らしいものが落ちている。

 ガラスの汚れフィルタだろう。ぱっと見向こうの景色が見えているが、実は苔か何かがそこにはあるのだ。

 そう結論づけ、私はまた目的地へと向かうのだ。

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