[短編(オリ)・創作論]次元の調停者

剣と杖を取り上げられ、魔法も封じられた彼らには、何ができるのだろうか。

正確に言えば、武器も兵器も全て取り上げ、各陣営の主導者をここに連れてきた。

人数は二人。

片方は生命を滅ぼすなど間違っていると剣を取り、民を先導した。高いカリスマ性と功績により民は彼を勇者と称えた。

もう一方は人間を、この世界の生命全て滅ぼし、また新たな生命を観察したいのだと腕を組む。強力な魔法を使え、魔王的な存在といえるだろう。種族はよく分からない。言葉が使えても、人間であるとは限らない。


彼らの決戦に水を指した私は邪魔者だろう。だから私は言う。

「武器を取り、争うのは結構だが、たまには頭を冷やしてみないか。ここでは、相手の肉体を傷つけると、何倍にも帰ってくる空間。目を潰そうもんなら頭が潰れることになる」

もちろんそんなものは使っていない。

「おまえたちのような対立は。異次元でも当たり前にある。だから、邪魔してみたんだが…もちろん、話し合う気がないなら、口を閉ざしたままここにいるといい」

出る条件はなんだ。魔王が足踏みしている。

「そうだな、お互いの野望を打ち砕く、その意思をお互いに砕いてもらいたい。武力なしにそれができるのか、興味があって」

馬鹿な話だ。勇者が腕組み。

「巻き込んだのはこっちの勝手だが、これを止めるかどうかも、こちらの勝手だ。まぁ、自由にしてくれ」

長くなりそうだと、ほくそ笑む。


◆◆◆◆


武力で争う物語を、無理矢理対話に持ち込んだらどうなるのでしょう?

どちらかが折れるのか、平行線のままなのか。あるいは従属するのか、共倒れか。


先述では極端な対立項ですが、話し合いでも同じようなことは起きえることでしょう。毎度決闘してたら命が足りないし、怒ってたら冷静に事を見つめられない。

「初めから相容れない」と先入観を持つことが、こういった対話の際に歪みなどを生むのでしょうかね?

そこにはこういった考え方があり、この意見がある、まで踏み込み、伝えることができれば聞いてくれそうなものですけれど…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る