第18話 シオンとミネルバ
ハルトが訓練のノルマを終えたところで師匠の方を見ると、師匠と見知らぬ女性が二人いた。
その二人は、いつもの全身スーツにベスト、スカートといった格好をしていた。
さらさらな金髪の女性と、しっとりした金髪に近い茶髪との女性。
共にスレンダーな体型をしている。
背はハルトよりも少し高い位だろうか。
顔立ちは整っている。
やはり西洋風な顔だ。
師匠はハルトに話し掛ける。
「ハルト君。
今日のノルマは、もう終わったのか?」
「はい、師匠。
終わりました。」
「そうか。
それは丁度良かった。
今日から組み手をして貰おうかと思っての。
儂の孫娘とその幼なじみを連れて来たのだ。
孫娘は師範代を努めておる。」
「初めまして。
シオンです。」
師匠の孫というシオンの名前を聞いて、ハルトは不思議に思った。
(シオン?
このドームと、グリフ達の星の名前と同じ名前だよな。
ありふれた名前なのかな?)
「初めまして。
ミネルバです。」
「シオンさんにミネルバさんですか。
宜しくお願いします。
ハラハルトです。」
ハルトは、頭を下げて挨拶した。
シオンと呼ばれた金髪の女がハルトに話し掛けてきた。
「ハルトさんと言われましたか。
お会いして早々に不躾な質問ですが、グリフ兄さんとどの様な関係なのですか?」
「グリフの妹さんですか。
関係と言われても…。
友達、と言って良いのかな?」
グリフを兄と呼ぶ、シオンの思いの外高い圧に押され、たじろぎながらも答えるハルト。
「私は妹ではありません。
それはともかく、グリフ兄さんは、貴方が現れてからというもの、貴方に掛かり切りだと聞いています。
それも厭々ではなく、あのグリフ兄さんが楽しんでいると聞いています。
貴方は、どの様な手を使われたのですか?」
ハルトに詰め寄ってくるシオン。
どう対応するべきか逡巡していると、師匠が止めに入った。
「シオンや。
そこまでにしておきなさい。」
「ですが、おじい様!」
「グリフのことは、ハルト君に訊ねても何も分からぬぞ。
話したいことがあるのなら、せめて組み手が終わってからにしてくれぬかのう。」
「…分かりました。
おじい様。」
一旦、引き下がるシオン。
「組み手の後で、兄さんとあなたの関係をお伺いします。」
「いやいや。
関係も何も無いですよ。
そちらはミネルバさん、でしたっけ?
そちらからも、何かお話しして頂けませんか?」
ハルトは困り果て、ずっと黙って見ていたミネルバに、どうにか止めて貰おうと思い声を掛ける。
-ミネルバはグリフと付き合っているのだがハルトは知らない-
ミネルバは、この頃グリフと会う機会がすっかり減ったことをハルトの所為だと思い、事もあろうにハルトとグリフの仲を怪しんでいる。
「貴方の様な人は、シオンに叩きのめされてしまえば良いのです。」
ハルトは全く見に覚えがないことで、責められる。
「うえっ?
物凄く理不尽なんですが。」
「ハルト君。
諦めなさい。
グリフが関わると、この二人は何と言うか、少しだけ暴走してしまうのだ。」
「は、はあ。」
ハルトは師匠の言葉に、
(これで少しだけって、どういうことだよ。)
と心の中でツッコミを入れた。
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