第14話 調査の準備③

 ハルトは、グリフと調査の準備を進めている。

 とは言っても、用意をしているのは専らグリフだが。

 目的地までのルートを検討していく中で、道中の安全の確保も必要となることに、グリフの指摘を受けて、ハルトは初めて気が付いた。

 ハルトは普通の住宅街で暮らしていたので、これが一番の問題であることに全く気付いていなかった。


 この星には数種類の原住民がおり、動植物も地球と比べると数が多い。

 勿論、人に害をなしてしまう危険な動物の類もいる。

 周囲の動植物を狩り尽くし、絶滅させるほど原住民の人口も多くは無い。

 ハルト達が向かうつもりの場所は、危険な野生動物があちこちにいる原野であり、そこを生身で横断するということになる。

 現在の地球上でも、毒を持つ動物や虫、肉食の動物、大型の動物等に因る年間の死者数は、あまり知られてはいないがかなり多い。


 グリフは、ハルトに危険生物と、その注意すべき点を教えていく。

 ハルトに取って幸いなことに、毒と寄生虫については、ハルトが気絶していた時に施された投薬のお陰で、体内に抗体が出来ており、既に対応出来ているとのことだった。

 咬まれたり刺されたりすることによる痛みは耐えるしかないそうだが、死ぬことに比べたら大した問題ではない。

 移動中、毎日の様に耐えなければならないことは無いだろう。

 ハルトの課題は、肉食動物と大型の動物への対応のみとなった。

 しかし、自身の体重を超える質量から、1トンを超える様な大型の動物が、自分に向かってくるのを、素人がいきなり回避出来るはずもない。

 そこでグリフは、ハルトに体の動かし方を覚えてもらうことにした。


 グリフはハルトに言う。

「ハルトは、体の動かし方から学んだ方が良いよね?

 その指導を僕たちの師匠にお願いしたんだよね。」

「師匠?

 何かの先生なのかい?」

「運動も含めた体術と武術全般の師匠だよ。

 身体の使い方を覚えるのに、一番良いんだ。」

「体術と武術?

 本格的にやるのかい?

 大分、身体が鈍ってるから、ちょっと心配だな。」

「ハルト。

 心配しなくても、最初は体力作りからだし、基礎中の基礎から、しっかり教えてくれるから大丈夫だよ。」

「何から何まで、ありがとう。

 グリフ。」

「ハルト。

 気にしなくて良いよ。

 現地に行けば、僕の研究もかなり捗るからね。」


 ハルトにも、全身スーツが支給された。

 ハルトも遂に、出オチ集団の仲間入りとなった。

 着脱して分かったのだが、全く継ぎ目が分からないのに上下セパレート式になっていた。

 長袖Tシャツとレギンスの様な物と言って良いのかも知れない。

 生地は、厚めのジャージ素材(軍用やサイクリングなどのスベスベ感がある)の様だ。

 繊維は全く分からない。

 体の線がもろに出るので、ベスト、パンツ(ズボンのこと)やパレオの様なスカート状の物を同時に身に着けるそうだ。

 ドーム内では、皆がこれを着ている。

 耐衝撃性の保護パッドもあり、自警団には装備として支給されているそうだが、調査に行く前にはハルト達にも渡されるそうだ。

 自警団に囲まれた時、ハルトが気が付かなかった迷彩には、何時でも切り替えが出来るそうだ。

 しかしながら、迷彩の機能は、視覚に多くを頼る人類、つまり原住民達にしか効果は無いだろう。

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