第9話 遠い星にただ一人(説明回)
ハルトはグリフと会話して、色々なことを理解した。
この惑星ガダ―グリフ達の先祖が名付けたらしい―に数種類の原住民がいること。
グリフ達の先祖は、原住民と話し合い、ガダに住まわせて貰う了承を得たこと。
お礼を兼ねて、この惑星で暮らしやすくなる様に、少しだけ手助けをしたこと。
それまでの生活とは隔絶した知識を授けた為、原住民から神さまの如き扱いをされたこと。
原住民に与える影響を少なくするため、手助けや接触をやめたこと。
グリフ達の先祖は、もともと別の惑星から来たこと。
グリフ達は、環境が安定している閉鎖されたシオンというドーム状の空間で暮らしていること。
グリフ達の集団も、意見が統一されている訳ではなく、外界と完全に切り離された生活をすることに賛同する勢力と反対する勢力がいること。
ドーム内は、食事や医療の他、全てが無料ではあるが、ドーム内で暮らす全ての人が、それぞれの労働を分担していること。
そして、ハルト自身が、全く別の惑星出身であること。
ハルトは、当然のことながら今すぐ地球に帰りたく思っている。
しかし、グリフ達の母星―閉鎖空間である、この場所と同じくシオンと言うらしい―や、この惑星ガダが表示されている宇宙図を見せられても、地球がどこにあるのかさえ分からない。
ハルトにとって、聞き覚えのある天の川銀河やアンドロメダ銀河を見付ける、と言っても呼称は当然異なるし、その特徴も挙げられない。
仮に銀河の位置が判明したとしても、地球がどの方角にあるのかさえも全く分からない。
太陽は、ただ一つの恒星ではなく、夜空に数多光る星の中の一つでしかない。
地球でも、最近ヒト種が生存可能な惑星を見つけたことがある。
しかし、地球よりも遥かに技術が進んでいるグリフ達であっても、数多あるヒト種が生在できる惑星全てを把握している訳ではない。
グリフ達の先祖には出来ていた、移民船の整備や修理が出来る技術者も既におらず、仮にいたとしても燃料の補給も出来ないので、惑星間を移動出来る手段は現時点では失われていると言って良い。
仮に移動が出来たとしても、光速を超えての移動は確立されていないとのことなので、ハルトの故郷である地球まで、どれ位の距離があるか分からない現状では、ハルトが生きている間に地球に帰ることは難しいだろう。
しかし、グリフはハルトに伝える。
「ハルト。
君が帰る方法を、幾つか思い付いたよ。」
「本当かい?
何でもするから教えて欲しい。」
ハルトは帰りたい一心で、グリフに懇願する。
その言葉に、ハルトの心労を少しでも和らげるように、グリフは軽く返答する。
「まあ当然、ハルトにもして貰うことがあるけどね。」
グリフは続ける。
「僕たちの先祖が、このガダに来たときに使った移民船が、まだあるはずなんだ。
その移民船の中に、移動出来る為の技術か、燃料があるかもしれない。
可能性は低いと思うけどね。」
「…。
どんなに可能性が低くても、帰れるかもしれないというのなら、そこに行ってみるしか無いだろう。」
もし仮に全てが上手く行きーハルトの故郷である地球の方角が分かり、宇宙船が打ち上げられとしてもー到着までどの位の時間が掛かるのかは、今現在、誰にも分からない。
分からないとしても、ハルトが微かな可能性に縋りたく思うのは当然だろう。
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