第7話 グリフとの会話

 グリフがザグレブに映像を見せた後、しばらく経ってから、ハルトの寝ている所に、ゲオルグが謝罪に来た。

 その場にはグリフも同席していた。

 ハルトは気が付かなかったが、改めて見ると、ゲオルグは大分年若く、高校を卒業するかしないか位の年齢の様だった。

 ゲオルグは、今回が初任務で酷く緊張していたこと、手柄を挙げたくて先走った行動をしたことを説明して、最後にもう一度、深く頭を下げて、医務室から出て行った。

 ハルトは、ゲオルグのしっかりした態度に好感を抱いた。

 そのような一幕の後も、グリフはハルトに色々と説明をしている。

 グリフとハルトは、すっかり打ち解けて、敬語を使わない様になっていた。


「ハラハルト君は…」

「わざわざ、ハラハルト君、って言わなくて良いよ。

 ハルト、で構わないよ。」

「ん?

 ハラハルトではなく、ハルトなのか?

 キミたちは、名前が二つあるのかい?」

「“ハラ”が家族というか一族の名前で、“ハルト”が自分個人の名前だね。」

「へー。

 僕たちとは違うんだね。」


 ハルトは、生活習慣の違いや動作の違いなどをグリフに教わっていた。


「あの全身スーツは、一体何なのか、聞いても良いかい?」

「ああ。

 この服には幾つかの機能があって、軽微なケガ等から身を守ってくれたり、周囲に溶け込む様な柄になったり、サイズや色も変えられるのさ。」


 グリフの説明によると、あの妙な全身スーツは、物凄いテクノロジーの塊だったようだ。

 グリフの全身スーツが茶色だったのは、どうやら迷彩機能だったようで、周囲の色に合わせてスーツの色も変わるとのことだ。

 ハルトがシオンに現れた時、実はグリフは近くにいたのだが、周りをキョロキョロしていたハルトが気が付かなかったのも、この機能に拠るものだった。


 グリフは丁寧に説明をしてくれるのだが、ハルトには素材も仕組みについても、さっぱり理解できない。

 ハルトは、グリフと話を続ける。


「何故、ここは閉鎖されているのか、聞いても良い?」

「ああ。

 少し前までは、外の人達と色々なやり取りや取引などをしていたそうだよ。」

「へー。

 何で、閉鎖したんだろうね?」

「僕たちの技術力や思想は、彼らにとっては高度過ぎたらしいんだ。」

「外の人達にとって高度過ぎ?…って、どういうこと?」

「彼らは、僕たちを神さま扱いしてきたらしいんだ。」


 ハルトは、グリフの“らしい”という伝聞ばかりの話し方が気になった。

 実際に会ったことが無い様な物言いをしている。

 ハルトが、その旨を聞いてみると。


「ああ。

 実際に彼らに会ったことは無いし、現在は接触を避けているのさ。」

「えっ…。」


 グリフは、にこにこした顔から、真面目な顔になり話し続けた。

「僕たちは、彼らとは異なる人種なんだ。」

「異なる人種?ってどういうこと?

 それに“神さま扱い”ってどういうこと?」

「ふふっ。

 まぁ、それは後のお楽しみってことにしようか。

 それより、今は君のことが聞きたいのさ。」

 グリフは、にこやかな顔に戻り会話を続けた。


 ハルトは、様々なことをグリフに説明していく。

 その説明が一段落したところで、グリフはハルトに言った。

「うん。これは間違い無いな。

 ハルト。

 君はどうやら、こことは異なる場所から来たらしいよ。」

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