第6話 閉ざされたシオン

「この閉ざされたシオンに、どうやって入って来たのかな?」

「それは、こちらが聞きたい位ですよ。

 目が覚めて直ぐだったので、何が何やら全く理解出来ません。

 ここは、何かの実験的な施設なのですか?」


 ハルトは、嘘偽りなく話しているが、相手がそのまま受け取ってくれるかどうかは相手次第だ。


「…。

 ここシオンは、外部から訪れる者は無く、外部に出て行く者も…極一部を除いては無い。

 唯一の扉は、現在は封鎖されている。

 こちらとしては、君が入って来た方法を、是が非でも知りたいのだ。」


 ハルトは、その言葉を聞いて愕然とした。

 先ほど、医師ユーギンが閉鎖空間と言っていたことを思い出したからだ。

 完全に外界と遮断されている空間に、いつの間にか入って来ていたハルト。

 ハルトは、自分のことながら怪しさが炸裂していると思った。

 ハルトが、自分に起きたことを思い起こしている時、誰かの声が聞こえた。


「団長。宜しいですか?」

 声を掛けてきたのは、ハルトが一番最初に出会ったグリフだった。


「グリフか。出来れば後にしてくれないか?

 シオンの防衛上の重大な問題を、早いところ片付けたいのでね。」

「団長。

 少しお時間を頂ければ、その重大な問題とやらが解決しますよ。」


 そう言うとグリフは、小型のタブレット端末の様な物を団長に向けて映像を再生した。

 その映像は、ハルトが現れた瞬間の記録であった。

 上から降ってきた訳でも下から現れた訳でもなく、揺らぎもなく、次の瞬間には、ただただそこにいる。完全なコマ落としのようだ

 因みにハルトは、この映像を後で目にする事になる。


「グリフ。

 映像の解析結果は出ているのか?」

「既に出しましたよ。

 何度も確認して色々な可能性を検討しましたが、結果はご覧の通りです。

 団長、ここにいるハラハルト君は、このシオンに、何の前触れもなく忽然と現れたということです。」

 団長に話しながら、グリフはハルトに微笑みかける。


「うーむ。

 全く信じられん。

 が、事実なのだろう。」

 ザグレブは、顎に手を当てながら唸っている。

 ハルトは映像を見ていないので、蚊帳の外に置かれている。

 大体の場面において、疑われたりする当事者は、このような傾向にある。

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