第375話 キミが笑う未来のために篇⑬ 新旧人外頭領対決再び〜馬子にも衣装のドレスアップ!
* * *
都心のど真ん中にありながら周囲の喧騒とも隔絶された庭園の奥に、御堂百理の邸宅はあった。
外壁には背の高い庭木が植えられ、外からは容易に中を伺うことはできない。だが、一度囲いの中に足を踏み入れると、ある種別世界のような日本庭園が姿を現す。
後楽園にもあるような回遊式の庭園の中には、思わず足を止めて眺めたくなるような池が広がっている――
立派な設えの正門から入り、庭園を歩くこと数分。
未だ御堂の邸宅は屋根さえ見えてこないのだが、同時に、散策を楽しんでいる自分がいた。
門をくぐったときより、都会の喧騒が遠ざかり、心なしか真夏の日差しも和らいだように錯覚する。事実、立っているだけで汗が吹き出ていた先ほどとは異なり、今は涼を孕んだ風が身体を包み込んでいた。
「タケル・エンペドクレス様」
車を降りたときより案内役をしてくれている和装の女性が呼びかける。
ふと足を止めると、木々の向こうに立派な武家屋敷が見えた。いつの間にか到着していたようだ。
「百理様は生憎と急な打ち合わせが入りまして、少々お時間がかかるようです。客間をご用意いたしましたのでそちらにてお待ち下さい」
立派な玄関扉が開かれる。
三和土で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて板張りの廊下を進んでいく。
見た目の厳つさに反比例して、内装はなかなか近代的だ。
空調が行き届いているらしく、外の酷暑とは違い、室温は快適に保たれている。客間へと至る途中にあった扉のいくつかは、いかにも洋室って感じの佇まいだった。
「こちらにてお待ち下さい」
僕に用意されたのはただっ広い客間だった。
先日宿泊した温泉の宴会場と遜色ないレベルだ。
100畳以上はあろうかというその部屋は、畳の直線がずーっと下座から上座まで縦に走り、左右には襖が垂直に立ち並び、さらに天井には畳を横断する梁が整然と渡されている。
まさにシンプルにして究極を行く和の空間。余計な装飾が一切ないのに贅沢と気品を感じさせる奥座敷だった。
真っ直ぐな線で構成されたその部屋の中央には、ポツンとひとつだけ正方形の座布団が置かれていた。多分あそこに座って待ってろってことなんだろうな。
僕はズンズンと座敷を進み、座布団の目の前にまでやってくる。
そうしていざ座ろうとしかけた時、ふと視線を感じた。
上座の方に目を移すと、そこには床の間があり、掛け軸がかけられている。
もちろん誰の姿もない。ないが、僕は迷わずに特別な目を発動させた。
――龍慧眼。
魔力を過剰に注げば星の彼方や量子の世界さえ知覚可能な目は、床の間の前にあぐらをかいて座る人物を捉えた。
『タケル様?』
立ち尽くす僕を訝しみ、真希奈が声をかけてくる。僕は座布団に正座すると、上座の方に向かって頭を下げた。
「初めまして、タケル・エンペドクレスです。こちらは娘の真希奈です」
突然の自己紹介に真希奈が再び口を開きかける。
それより一瞬早く、なにもない空間から声が発せられた。
「ご丁寧痛み入るねえ。もうちょっと観察してみたかったけど、あっさりバレちまったかい」
『えっ!?』
真希奈が珍しく驚く。
平気なフリをしているが僕だって驚いている。すうっと、景色の中からひとりの老婆が現れたからだ。
小柄な老婆だった。
サングラスのような丸い眼鏡をかけていて、そこから放射状に亀裂のような皺が顔面に走っている。
服装は和服姿で、上から真っ白い羽織りを着ており、背中は完全に丸まってしまっている。
見た目だけなら小柄な老婆なのに、姿が見えた途端発せられる存在感は強烈の一言と言えた。
『い、いつから……真希奈はまったく気づきませんでした……!』
いつからと言われれば最初からいたのだろう。まるで理屈はわからないが、精霊である真希奈すら欺く隠形術は見事としかいいようがない。
「自己紹介の前に――坊やはどうやって私がいるって気づいたんだい?」
背中が丸まっているから自然とこちらを覗き込む格好になる。そうすると丸眼鏡がずれて、その下から黒目100%の眼球が僕を見つめてくる。
「なんでってその……」
「なんだい、なんでもいいから言ってご覧よ」
老婆から敵意は感じられない。
ホント純粋に興味があるようだ。
精霊でさえ気づきようがなかった隠形に気づいた理由。それは――
「百理は日本古来からいる化物の頭領って聞いてたから、その本拠地なら絶対なにかいるだろうなと……」
「ほう、最初から当たりをつけて警戒してたっていうのかい?」
「だって、迎えに着てくれたあの和服の
さすがに妖怪屋敷に連れて行かれると思ってワクワクしていたとは言えない。
あとアンタの視線イヤらしいから、なんとなく勘でわかったんだよ、とも言わないでおく。
「そうかいそうかい。ならどうだい、坊やの目の前にいるのが、化物の親玉だよ。目にした感想はどうかね?」
老婆はクリっと見た目に反した可愛らしい所作で小首を傾げる。完全にずれた眼鏡の奥からぬばたまの眼球が僕を映していた。
「お綺麗ですね」
僕がそう言うと、老婆は唇を歪ませた。
顔の皺がまるでパズルのように入れ替わる。
機嫌を損ねたようで、明らかに声が低くなる。
「こんな皺くちゃなババア相手におべっか使ってどういうつもりだい? 聞いてた話と違うねえ。坊やはあまり口が回る方じゃないそうだけど」
確かに僕は会う女性の容姿を褒めてご機嫌を取るタイプではない。
だからと言って、相手に気に入られようと、口から出まかせを言ったわけでもない。
「いえ、僕が言ったのは見た目の話ではなく、あなたが身に纏うその精強な魔力――霊力って言うんでしたっけ。それのことです」
「へえ……坊やの目には、私はどのように映っているんだい?」
「燃え盛る炎のような霊力が見えますよ。百理は光を孕んだ白色だけど、あなたの炎は深い深い碧色をしている。僕の大好きな
精霊を顕現させたアイティアもそうだが、炎の使い手というのは感情や心の内に秘めたものがそのままストレートに炎の性質に出るような気がする。
鬱屈していて捻くれながらも浄化を現す紫紺の炎を宿すアイティアの精霊モリガン。
潔癖であり正しく王道を往こうとする百理は天壌高貴な白炎をその身に宿している。
一方この老婆の炎の色は深い。
見方や立ち位置によってその色合いを変化させる様は、全てを許容して受け入れる懐の深さも感じさせる。
精霊を発現させて以降、優しさと慈愛――母性を感じさせるまでになったエアリスと、そういう意味で少し似ているな、と思ったのだ。
「なるほどなるほど。坊やが綺麗だと言ってくれたのは私の魂の色や形だったのかい。なんだか見た目を褒められるよりもずっと照れくさいねえ。坊や――タケルと言ったか。今いくつだっけ?」
「十六になりました」
「そうかい。私があと三百三十歳若かったら是が非でも自分のものにするのにねえ」
「え」
老婆は歯抜けになった口を開き、ひゃっひゃと笑った。ふう、どうやら機嫌は直してくれたようだ。よかったよかった。
「名乗るのが遅れたね。私は
「改めて、タケル・エンペドクレスです」
老婆――命理さんは「知ってるよ。悪いんだけど耳が遠いんだ。もっと近くに来てくれないかい」と言った。
僕は座布団を持って立ち上がり、床の間にいる命理さんの眼の前に腰をおろす。すると命理さんは「近くで見るとめんこい顔してるじゃないか」などと、なんとも反応に困ることを言ってきた。
「今日はうちに来るって聞いてね、一度会っておこうと思ったんだ。色々と百理が世話になっているようだねえ」
「いえ、世話だなんてとんでもない。むしろ僕の方が色々迷惑をかけているので。あ、何時ぞやは
『お初にお目にかかります。真希奈は真希奈と言います。よろしくお願いします』
首から下げたスマホの画面に映った真希奈が深々と頭を下げる。命理さんの目尻が眼鏡越しに下がるのを皺が教えてくれた。
「カビの生えた話だねえ。使いようがなかった骨董品を有効活用してくれたんだ。人工的な高次元生命であるその子が齎してくれる貴重なデータのおかげでお釣りがくるってもんさ。むしろその子と一緒に日の本を救ってくれて、こっちがお礼を言いたいくらいだよ」
御堂財閥が古来より所有していた
僕は自分の力を使いこなすことはできなかったし、セーレスを救い、サランガを倒すこともできなかっただろう。本来頭が上がらないのはこちらの方だった。
「さて、私や坊やにとって常人より余裕があるとはいえ、時間が貴重なことに変わりはない。娘に代わって進めさせてもらうよ」
そういうと命理さんはパンパンっと手を叩いた。
襖の向こうに気配が生まれスッと開かれる。
和装の女性が二人、深々と頭を下げ、音もなく入室してきた。
「正装を借りに来たんだろう。スーツの上下でいいのかい? 私ならアンタの紋付袴が見たいんだけどねえ」
「いえ、今回は相手が相手なので、普通のフォーマルでお願いします」
「相手ねえ……。女吸血鬼を孕ませたんだっけ。やるねえ、あの女の鋼鉄の股ぐらを開かせたんだろう。一体何百年ぶりの逢瀬だったのやら……!」
命理さんの肩がクックと震える。
どうやら笑いを堪えているようだった。
それにしても股ぐらって……。
まあ僕に逢瀬の時の記憶はまるでないんですが。
会話をしている最中にも、和装の女性たちが僕の両隣にやってきて、メジャーを使って手足や胴回りの採寸を始める。僕は慌てて命理さんに確認をする。
「あ、あの、僕はスーツを一着借りられればそれで良かったんですけど?」
「何言ってるんだい、女を口説きに行くんだったらもっとちゃんとしたものを着ていかないとね。安心おしよ、なにも一から作るわけじゃない、サイズの近いものを坊や用に仕立て直すだけだ。それなら時間もかからないさね」
「すみません、お手間をおかけします」
「手間なんてとんでもない。その代わり出来上がるまでこのババとお茶に付き合ってもらうよ」
再び命理さんが手を叩くと、まるで予め用意していたように、襖の向こうからお盆を持った女中さんが現れる。
僕はスーツが出来上がるまで命理さんからの質問攻めにあうのだった。
*
「おやぁ――いいじゃないか。馬子にも衣装なんかじゃないよ、どこからどうみても貴人にしか見えないね」
約一時間後、手直しが終わったというので、別室で着替えた僕は、命理さんの前でスーツ姿をお披露目することになった。
『命理さん命理さん、もっとまっすぐスマホを構えてください!』
「あいよ、こんなもんかい真希奈ちゃん」
『最高ですタケル様! 超かっこいいです!』
僕が着替えている間、スマホ――というか真希奈を命理さんに預かってもらっていた。
お茶をしている間、僕は様々な質問を命理さんから受けた。
異世界で目覚めたことから地球での生活はもちろん、王様をやっている現状についてもだ。
その中でもやっぱり彼女が一番興味を示したのが真希奈誕生のくだりであり、僕が実際に行った地球型惑星にあった文明の痕跡や、
そしていつの間にか、本当の孫娘とおばあちゃんのように、真希奈と命理さんのふたりは仲良しになってしまった。
人見知りをする真希奈にしては珍しい――いや、よく考えれば今まで僕の周りに命理さんのようにお年を召された女性はいなかった。真希奈が嫉妬心を抱くこともなく安心して心を開ける相手なのだろう。
命理さんも、元々は自分たちが所有していた
「どうだい、どこか『いづい』ところはないかい?」
いづい、という言葉に一瞬考えてしまうが、話の流れから「違和感はないか」と聞かれているのだと悟る。
「いえ、全然大丈夫です。それどころか全身が引き締まるというか、背筋が伸びる感じがします」
着替えて鏡の前に立った瞬間に驚いたものだが、袖丈はピッタリだし、シルエットもシュッと細長くなっていた。
僕が着てきた礼服なんて学ランが精々だが、それとは着心地がまるで違う。多分すんごく高いスーツだと思うが、怖くて値段なんて聞けやしなかった。
「こりゃあ今度は是非とも和服を着て欲しいねえ。どうだい真希奈ちゃん、お父さんの晴れ姿、見てみたくないかい?」
『見たいです!』
「決まりだね。今度来るときまでに用意しておくよ」
なんだか次の予定が決定されてしまっていた。
真希奈が喜んでいるから別にいいけど……。
「ところでどうなんだい、今回は女吸血鬼だったが、うちの百理とはそういう話はないのかい?」
「え、そういう話、ですか?」
唐突に話の流れが変わり、僕はギョッとしてしまう。真希奈が映ったスマホを手渡しで受け取りながらつい聞き返してしまう。
「あの子もねえ、私の若い頃に似てなかなかの器量よしだ。坊やもそう思うだろう?」
「ま、まあ、美人ではありますね」
本人の母親を前にしてどう答えたものか。
当たり障りなく、とりあえず褒めてはおく。
命理さんは「そうだろうそうだろう」と頷いた。
「ただねえ、あの子は初恋の相手に縛られすぎているようなんだよ」
「初恋、ですか……」
忘れてはいけないのは、百理はああ見えて江戸時代から生きているということ。
その彼女が初めて恋をしたというなら、恐らくリアルで十代の頃の話だろう。するとそれって今から何年前の話になるのか。
「どうもその初恋の男に操を立てているようで、ちっとも新しい出会いをしてくれないんだ。困ったもんだよ」
「はあ……きっとすごく情が深いんですね」
「深すぎだよいくらなんでも。どんどん自分で穴を掘っていっちまうのさ。そんでその穴に潜って自分から土をかぶって冬眠しちまうんだ。今までだってたくさん良い縁談を持ってきてやったのにさあ、私はこの歳になっても未だに孫の顔を見れていないんだよ」
うーん、そんな事情も手伝って、つい真希奈が可愛く見えてしまったのか。命理さんにとっては早く孫を抱きたい心境なのだろう。
しわくちゃな枯れ枝のような手に、みずみずしい玉のような生命を抱く。それが老人にできる最後の仕事であり、幸せなのかもしれない……。
「しかし、そんなに長い間同じヒトを想い続けられるってのもすごいことですね。一体どんなヒトなんですか?」
僕は百理の味方をする意味で質問したのだが、答えを聞いてすぐさま後悔した。
「吉宗公だよ」
「ぶ――ッッ!?」
まさかまさかのとんでもない偉人だった。
冗談でもなんでもなくあの八代将軍!?
リアル暴れん坊将軍!?
「音に聞こえた天下の大将軍様だよ。まあそれに比べたら見合いの男どもなんて石ころ程度にしか見えなかったんだろうさ。贅沢なことだよ」
狼狽える僕の様子を見て、命理さんは実に楽しそうに笑っている。
前歯が無くなった口元をニッコリとさせながら「だからね」と続けた。
「吉宗公と同じか、それ以上の男ならきっとあの子も喜んで身も心も差し出すと思うんだよ。そうは思わないかい?」
「まあ、理屈でいったらそうかもしれませんけど、でもそんな男なんてどこにもいないと思いますよ」
ふと手の中にスマホに目を落とすと、真希奈がじとーっと半眼で僕を見ていた。
ああ、真希奈がこんな顔をするときは、大概僕が見当違いのことを口にしているときだ。
命理さんに視線を戻すと、彼女も同じく「やれやれだね」とため息をついていた。
「いるじゃないか、私の目の前に。自分の女を助けるついでで世界を救っちまうような英雄がさあ」
「ひッ――」
ニチャァと粘着質の笑み。
僕は今初めて目の前の老人を恐ろしいと思った。
執念や妄念とでも言うのか、長い年月をかけて培った願望を叶えるためならどんな手段も厭わない――そんな覚悟が透けて見えるようだった。
「なあ坊や、老い先短いこのババの願いを叶えてはくれないかねえ。私の見立てでも、あの子は憎からず坊やを想っているはずさ。なんなら仕込むだけでもいいんだが、どうだい?」
「仕込むって、何をですか?」
「おや、女にみなまで言わせるんじゃないよ。これだよこれ」
命理さんは鶏ガラみたいに細い人差し指と親指で輪っかを作ると、その中に反対の人差し指をブスリと突き刺す。僕の意識は宇宙を彷徨った。
「お母様――――ッッッ!!」
僕が死にかけていたその時、バコーンと勢いよく襖が吹き飛んだ。
現れたのは肩で息をする百理だった。
上野で見たのと同じフォーマルな洋服姿だったが、その所々が破けてボロボロになっていた。
「実の娘を封印するなんて一体なにを考えているんですかあなたってヒトは――ッッ!!」
「ちっ、予想よりずいぶん早かったね。しょうがない、まどろっこしいことは終わりだ。百理、おまえ今すぐ坊やと結婚しちまいな!」
「なっ――はあああっ!?」
何を言い出すんだこのヒトは!
僕も百理も空いた口が塞がらない。
僕は昨日結婚の約束を二人の女性と交わしたわけで、それでこれから三人目にプロポーズを――そっか、百理は四人目か? いやいや……。
「馬鹿な――、タケル様にはもう意中のお相手がいるのです! わ、私などがそのようなこと望めるはずがありません!」
「――ちっ、そんな生っちょろいことばっか言ってるから、狙ってた男を他の女に取られちまうんだろうが! 自分が欲しいと思ったら奪い取るもんなんだよ!」
「すでに子どももいる家庭にそんなことできるわけないじゃないですか!」
「子ども……ああ、真希奈ちゃんだけじゃないのかい?」
ばあちゃんがギロリっと僕を睨む。
こええええ……!
「そうかい、なら仕方ないね」
「わ、わかっていただけましたか」
ホッと胸をなでおろす百理。
僕も結婚したばかりでこんな会話は心臓に悪すぎる。
だというのに――
「
「はい?」
さっきから命理さんの会話がポンポン飛んでいく。僕と百理の理解がまったく追いつかないぞ。
「仕方ない、こうなったら坊やから種だけでももらいな、今すぐ!」
またしてもパンパンと手をたたく命理さん。
するとはるか後方の奥座敷が開いて、そこにはろうそくだけが枕元を照らした布団セットが。
布団は一組、でも枕はふたつ。すぐ側のお盆の上には、いつかラブホで見たその手のおもちゃがズラリと並んでいた。うわあああ!
「お、お母様、タケル様の前でこんな……もうやめてください!」
「いまさらカマトトぶるんじゃないよ! いい加減その糞重い操を捧げちまいな! 330年も生娘とか大概におし!」
「ぶー――!!」
吹いた。我慢しようと思っていたけど耐えられなかった。あ、百理が涙目で僕を睨んでる。
「私のトップシークレットをよくもタケル様の前で――!?」
「何がトップシークレットだ! アンタ以外みんな知ってるよ! ひた隠しにしてるつもりなのはアンタだけさ! ようやっとこんなとんでもない男が現れてくれたんだ、今モノにしないでどうするよ!」
「だからタケル様にはすでにエアリスさんとセーレスさんというお相手が――!」
「YOU
チェケラってかババア。
「――殺す。あなたを殺して私も死んでやる!!」
ボッ――と白い炎を纏う百理。
「お舐めじゃないよ、腐ってもまだまだアンタなんぞに
命理さんも緑色の炎を纏った。
「あまねく
「極楽浄土で罪を数えな――!」
新旧ふたりの人外頭領が激突する。
その力は凄まじく、武家屋敷と庭の一部が吹き飛んだとかなんとか。
僕は魔法の力を駆使してふたりのキルゾーンからとっくに撤退済みである。
そして申し訳ないとは思いつつも、スーツが汚れる前にカーミラの元へと急ぐのだった。
続く。
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