浄化の勇者様御一行バカンス篇
第354話 浄化の勇者様御一行バカンス篇① 浄化の勇者様御一行inアメ横〜ご褒美のバカンス開始!?
「どこだここは?」
人通りが多く、どこか繁華街のど真ん中に僕らはいるらしい。
周りの通行人が僕らを迷惑そうに避けた途端、全員目を丸くして、口をポカンと開けている。
中には立ち止まって僕らをマジマジと見ている人たちもいて、正直かなり邪魔になっていた。
だいたいからしてどうして僕はこんなところにいるんだろうか……。
『ケル様、タケル様……!』
うおおっ! 呪いの面相を全開にした真希奈(人形)が僕の顔をベシベシ叩く。
いきなりはビックリするぞその顔……。
「どうしたんだ、真希奈?」
『……やっぱり、私の話を聞いてなかったのですね』
「話? なんの?」
『タケル様が例の金の力を使った影響で、ずっと頭がボーッとしてらっしゃったようなので、今度一度、地球の医療機関で精密検査を受けてもらいましょうというお話をしていました』
「え、そんな話してた?」
『何度か返事をされてたのに……やはり、あの力は両刃の剣ですね。記憶障害や認識障害が出てしまう。不死身なので回復はするようですが、致命的な弱点になりかねない……もっと真希奈がしっかりしなければ……!』
僕の目の前でふわふわ浮かびながら、人形の真希奈は何やら決意を新たにしている。
そんな姿を見て、周囲の人たちはやっぱり奇異の視線を僕に送っているようだ。
「それより真希奈、ここはどこだ?」
何やら向こうの入り口らしき交差点の手前には、アーチ状の看板がでかでかと飾られている。
なになに、『歓迎・アメ横商店街!』だって?
アメ横……アメヤ横丁ね。はいはい。
「アメ横!? 御徒町!?」
バッ、と振り返る。するとそこには、不安そうな表情のセーレスさんとエアリスさんがいた。
「ふたりまで……一体、どうしたんだ!?」
「えっと、どうしたっていうか……」
「貴様、本当に覚えていないのか?」
セーレスは綺麗な眉をハの字にして、エアリスは僕の目を真剣な表情で覗き込んでくる。
「お父様!」
「しっかり、して……」
おお、飛びついてきたのはセレスティアとアウラだ。
セレスティアはともかく、アウラはふわふわ飛んでくるのをやめなさい。皆見てますよ。
「もしかして、今までのやりとり、全然覚えてないのかしら、タケルさんは?」
「いきなり全員集合ですものねえ。私は緊急招集に慣れてましたけど……」
「と、突然帰るって言い出して、私達も慌てて追いかけたら、いきなりこんな場所に出て……」
『もうボケ老人の域だな。最強も形無しだなオメー!』
僕はさらに驚いた。
なんと、地球には縁も所縁もないパルメニさんとソーラスにアイティア、アズズがいたからだ。
パルメニさんは慣れない場所に来て居心地が悪そうにしているし、アイティアなどはジロジロ見られて涙目になって縮こまっている。ソーラスはあっけらかんとしたもので堂々としているが。
パルメニさんに持たれたアズズの仮面は、表情はわからないが、多分興味津々で周囲を観察していることだろう。
「それよりもさっさとこの場を移動した方がいいのではないか? 人混みの中とはいえ、儂らは突然現れたからのう」
「……さっきから、ものすごく、見られてます……」
オクタヴィと前オクタヴィアまで。
「突然現れたって、まさか聖剣の『ゲート』を使って?」
「それも覚えておらんのか。やれやれ、ホント危ういのう今のお主は。遠見の魔法で見たあの金色の力、今後はあまり使わん方がええぞ」
オクタヴィアはため息混じりに頭を抱え、その隣では前オクタヴィアが「地球……コーラが飲みたい、です」と独り言のようにブツブツ言っている。
このメンツが揃っているってことは当然……。
「あんた、ホントいい加減正気に戻りなさいよ。最初は自分の城に帰るって言ってたのに、どうして日本に来ちゃうのよ!」
当然、イリーナ・アレクセイブナ・ケレンスカヤさんもいらっしゃるわけで。でも自分の生まれた星に帰ってこられたので、元気が良さそうに見える。
「それにしても、みんなちぐはぐな格好してるな」
僕がそうつぶやいた途端、全員から「お前のせいだ!」とツッコミが入った。
セーレスは例のホットパンツルックに白衣姿。エアリスとソーラス、前オクタヴィアはメイド服姿で、パルメニさんは典型的なヒト種族の女性用の民族衣装だ。
オクタヴィアは地球で言うところのゴシックロリータに近い服装で、一番目も当てられないのがアイティアで、ほとんど寝間着代わりのシャツと長ズボン姿だった。
いかにも町娘って感じで、地球だとちょっと可哀想なくらいみすぼらしい。本人の容姿がかわいいだけに落差が激しく、一番視線を集めている。あと猫耳だしな。
ちなみに僕はいつものGAPパーカーにジーンズという、プライベートな空間ではいつもの通りの格好をしている。
自分の城下町にでかけるときは違和感のない現地の格好に着替えるし、それ以外はいつも鎧を着ているので問題はないのだ。
「え、あれ、鎧?」
全員がしらーっと白けた顔になり、さっと道を開けた。
その先には圧倒的な存在感を放つプルートーの鎧Ver.2,0が屹立している。
赤いマントと漆黒の
先程から道行く人々がスマホを構えているのはこいつを撮影していたのか。
「馬鹿タケル。とりあえず移動するわよ」
「ああ、そうしよう。今すぐ移動しよう」
イリーナに言われて僕らは歩きはじめる。
大所帯な僕らはすっかり注目の的で、囲みをかき分けるのに苦労したのは言うまでもない。
ほんと、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね。
続く。
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