第197話 地球英雄篇2⑨ この世の果ての景色〜太陽になった少年
* * *
46 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:02:48.13 ID:rWY5FvoS
もう世界は終わりだ! 俺達は死ぬんだ!
47 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:05:36.93 ID:Fp1R+XG
≫46絶望厨乙
48 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:06:14.29 ID:6UWu2QD
おい、みんな外に出てみろ
49 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:06:55.21 ID:d/vF1EMm
≫48俺たちに死ねと?
50 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:07:01.22 ID:d/vF1EMm
≫49違うって! マジですげーから!
51 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:07:43.12 ID:R3WC/eh
なんぞ、なんぞこれー!
52 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木)19:08:45.94 ID:h7Y+FIM+
夜が埋め尽くされてるwww
53 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木)19:08:54.78 ID:JMuCNoga
日本の新兵器か!? ついに政府が本気になったのか!?
54 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:09:19.24 ID:BTz/5TMz
マジすげー! バケモノがどんどんぶっ殺されていくんだがwww
55 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:09:34.55 ID:dJSHfDGv
すげー。こんな光景見たことない
56 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:09:57.21 ID:cGhAPTLr
今キタ。地下にいるから外が見えない。どうなってんの?(´・ω・`)
57 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:10:08.43 ID:FaUA8GB
マンガかよw おまえら集団催眠にかかってるんだって
58 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:10:43.63 ID:9YYBwlqF
≫56空いっぱいの光の雨
59 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:11:02.83 ID:4ZZ7P0mC
なんなのあれ。すげえ綺麗。
60 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:11:54.99 ID:k5ZAWS/g
さっき綾瀬川心深の放送に金色の人が写ったんだが。
61 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:12:30.48 ID:l5hHGLGf
これ助かった?
62 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:12:59.43 ID:osMWVLRl
≫60俺も見たw 黄金聖衣かよwww
63 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:13:21.65 ID:q2hB4EdA
≫60ぜんぶCGだろ。俺達は綾瀬川の壮大なイリュージョンを見せられているんだ
64 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:14:14.41 ID:0O8IEe2H
つタケル・エンペドクレス
65 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:15:01.96 ID:tzuUwhUq
ここみちゃんの泣き顔最高(*´ω`*)
66 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:15:53.28 ID:g2S5O8Eh
さっきからあのエロい女神の姿が映らないいいいいいい( ;∀;)
67 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:16:16.98 ID:HWFOQG
≫64テロリストがなんだって?
68 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:16:48.83 ID:+ir2Ci/p
≫64レスしてほしいのか?
69 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:17:21.76 ID:XpwJLTM
綾瀬川心深の放送に現れたのも、バケモノ共をやっつけたのも、全部タケル・エンペドクレスだよ
70 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:18:46.47 ID:V4e55HXm
は?≫69なんだって?
71 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:19:10.13 ID:j/aHo//b
≫69正気か?
72 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:19:50.13 ID:dVfnyUjC
≫69馬鹿なの?死ぬの?
73 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:20:24.85 ID:cJDfbNy0
≫70、71、72事実だよ。タケル・エンペドクレスは英雄だ
74 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:21:02.74 ID:biH6MdMg
≫69ソース出せよ
75 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:21:50.82 ID:94ulSLD0
≫73英雄ってwww
76 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:22:19.58 ID:1ISums2R
http://mint.2ch.net/test/read.cgi/newsuA83bUX4Qe/E38B16A6F1/
77 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:23:20.19 ID:anGEKB/j
≫76こ、マ?
78 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:24:16.37 ID:FwxAbH6A
≫76映画だろ? CGだろ? そうだよな???
79 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:25:01.85 ID:egyH0E7p
≫78そんなこと言ったら、あのバケモノだって映画やマンガの世界じゃん
80 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 19:25:55.68 ID:4f7aRjyu
タケル・エンペドクレスってなんなの? 何者なの?
81 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2016/12/29(木) 21:20:25.21 ID:aSDRwyDv
本物のヒーローなのか……
* * *
その日。
太平洋上を俯瞰するすべての軍事衛星、偵察衛星、地球観測衛星――
人類の英知によって地表を監視する目的で作られた人工天体は目撃する。
龍の形をした島国――日本から解き放たれた幾億もの光のレーザーが太平洋を横断し、アメリカ大陸へと降り注ぐ様を。
戦争放棄と非核三原則を掲げる日本による攻撃――などではなく。
あるいはそうだとすれば、光の速度をもってして地球の裏側を直接攻撃できる手段など、いかな人類の先進国家であっても不可能なはずである。
だが、その光の矢は人類に仇なすものではなかった。
むしろ仇なすモノを屠り去るために放たれたものだった。
航行中のすべての船舶が。
飛行中のすべての航空機が。
世界中の観測施設が。
そして世界中の人々が。
テレビを、ネットを、SNSを通じて目撃していく。
あの光はなんだ?
太平洋を埋め尽くすほどのあの光の矢は一体なんなんだ!?
ある者は
ある者は呟く。神の御業であると。
ある者は囁く。ガイアの怒りの咆哮だと。
やがて地球の終わりだと、絶望に埋め尽くされていたネットに、希望の報告が続々と書き込まれていく。
光の矢がバケモノをやっつけてくれた。
あんなにいたバケモノが残らず消えた。
あの黄金の光は――あの黄金の人影は誰なんだ、と。
やがて人々は知る。
誰が言ったのかはわからない。
でも誰かが確かに言ったのだ。
あれは英雄なのだと。
希望を齎す、本物のヒーローが現れたのだと。
* * *
「何か来る――!?」
自分の眷属である星の大気たちを切り裂き、何か異質な存在が迫っている。
そのことに真っ先に気づいたエアリスは、一瞬己の持てる全ての力を駆使して迎撃しようとする。だが、その試みより遥かに速く――それは飛来した。
「なッ――!?」
エアリスが作り出した竜巻に光の矢が突き刺さっていく。
その中では今正に、捉えたバケモノたちを分子単位にまですり潰している真っ最中だった。
光の矢はエアリスの支配下にあった風を雲散霧消させ、さらに内部にとらわれていたバケモノをも消滅させていく。
それだけにはとどまらない。
水平線の彼方、空を埋め尽くす程の黄金の瞬き。
それをエアリスが認識した途端、無数の光の雨が街へと降り注いだ。
まるで夜空を彩る星の全てが堕ちてきたような。
そう思えるほどの光のシャワー。
高次元生命量子結合体――アウラとの精霊合体を果たしているエアリスにはその光の矢が正確無比に、背後に広がる大陸中のバケモノだけを一匹残らず撃ち抜いていくのがわかった。
「まさか――いや、間違いない!」
先程この星の裏側に感じた巨大な魔力の波動。
まるで地球を丸ごと飲み込むほどの規模だった。
そんな力の持ち主は、たったひとりしか心当たりがない。
「タケル・エンペドクレス。我が親愛なる主よ――」
そして、彼女の確信を裏付けるかのような光景が、水平線の向こうに現出していた。
* * *
「なんだったの今の……」
市街地のど真ん中にあるビルの屋上で、セレスティアは呆然と呟いた。
彼女が街中に張り巡らせたアクア・ブラッドによる水域結界。
それによって知覚されていたすべてのバケモノ共が残らず消えてしまった。
理由はわかっている。
今しがた街中に降り注いだ光の雨が、バケモノを残らず殲滅してのけたのだ。
圧倒的な戦闘力を誇るセレスティアを持ってしても、あと数時間はかかるかと思われた戦いが、まさに一瞬で終わってしまった。人間たちに被害がないのも確認済みである。
「エアリスがやってくれたのかな。でもなんだかそんな感じじゃなかったような……」
自身が腰掛けにしているマリオネット・ラプターの肩部アーマーに屹立し、セレスティアはバケモノ共が飛来した方角、遥かな距離を隔てた太平洋側の空を見た。そこで、彼女は驚愕の光景を目撃する。
「黄金の、龍……?」
雄々しく逞しく神々しいまでの光の奔流が、頭上に鎮座する黒い太陽目掛けて昇っていくではないか。その様を見た瞬間、セレスティアは飛び立った。
「お父様……きっとお父様だ!」
翼を広げたラプターの背に乗り、子供のように目を輝かせながら、自分もまた父に続くのだと言わんばかりに光の龍を追いかけ始めるのだった。
* * *
『――ル様、――タケル様』
真希奈の声に自我を取り戻す。
そして、僕が今どこにいるのかを知る。
足元には青く輝く地球。
そして頭上には、数多の星々が輝く大宇宙が広がっていた。
『タケル様、大丈夫ですか?』
「ああ……なんだか、夢を見ているみたいだった」
夢の中でマキ博士が驚いていた。
真っ白なロボットが僕を睨んでいた。
何故か助けた心深に笑われた。
イリーナに背中を押された。
ベゴニアには弱みを握られた。
間一髪、百理とカーミラを助けることができた。
「でも、みんな無事でよかった……」
意識が微睡む。
眠い。とてつもなく。
だが僕はこれから最後の仕事をしなければならない。
黄金の光輝を纏いながら、僕は決然と前を見据えた。
『目標健在。距離約100万キロまで接近。すでに地球の地軸に影響が出始めています。このまま放置すれば、サランガを殲滅したとしても地球環境に重篤な影響が出るものと予想されます』
遮るものが何もない満天の星空。
地球の衛星たる月。
全てを照らす太陽。
そして、異物としか言いようのない黒い太陽。
僕は最大の魔力を込めて意識を集中させる。
「
そう呟いた瞬間、世界はまったく違う姿となって僕の目に飛び込んできた。
僕は今、3次元空間をより高次元から俯瞰している。
遥か銀河の彼方から放たれたガンマ線が見える。
太陽が放つ強力な電磁波も、それを受け止めた月が地球に注ぐ特殊な波動も。
地球に存在する生命の輝きこそ、星々の瞬きに勝るとも劣らない美しさだと知る。
そして、あの黒い太陽の正体も理解する。
あれはブラックホールなんかじゃない。
ブラックホールのように光を歪めるほどの質量を持っているが似て非なるものだ。
「わかったぞ真希奈。あれは聖剣の『ゲート』に近い存在だ」
『なんと――タケル様、如何いたしますか?』
「もちろん消滅させる」
『警告。目標の推定質量は太陽の数十倍から百倍はあるものと推察されます。如何な今のタケル様であっても、あれを排除するためにはまるでエネルギーが足りません』
「エネルギーが足りないなら、あるところから持ってくるだけだ――」
言いながら、僕は自分の内側に意識を集中させる。
ふたつの心臓。
そして真希奈のコア。
さらにもうひとつ。
世界というシステムから無理やり奪い取ったあの力。
「聖剣よ」
僕の両手の間に白銀の光が爆発する。
それはみるみる収束し、無垢なる刃となった。
僕自身の認識によって剣の形として結実した聖剣。
ここではない、別の世界を開くための鍵。
虚空心臓内に無理やり収めたはいいが、あまりの魔力食いのため肝心な時に暴走し、龍神族の不死性を失わせるほどに僕を消耗させた。
だがディーオの心臓が目覚めたことで、今や聖剣は完全に僕のものとなった。
柄も鍔も存在しない、ただの白銀の刃を手に取り、僕はくるりと反転。
背後に向けて上段から振り下ろす。
「大・開・門――!」
僕が背負っていた地球が真っ二つに裂ける。
違う――僕と地球との間にある空間が引き裂かれ、巨大な漆黒のゲートが出現したのだ。
『タケル様、これは――』
「足りないエネルギーはここから取り出す――!」
それは無明の大海。
電磁気力を拡散させ、一切の元素結合を阻害する深淵の世界。
充満するのは色荷を持たず光学観測が不可能な素粒子。
即ち
地球が存在する宇宙は現在も膨張を続け、それをさせている原因こそが暗黒物質も含めた『ダークエネルギー』の存在。
僕が今開いたゲートの向こうに広がるのは、ダークエネルギーが100%支配する別の宇宙。
この世界に囚われたが最後、あらゆる物質は原子崩壊を起し、素粒子レベルで分解されてしまうのだ。
暗黒が手を伸ばしてくる。
大きく開かれた扉の向こうから、この宇宙を侵食しようと、ダークエネルギーが漏れ出ているのだ。
それはまるであの黒い太陽から溢れ出たサランガが、地球へと汚穢な食指を伸ばす様を彷彿とさせる。
「来い! お前の獲物は僕だ! 僕を喰らい尽くして見せろ!」
ふたつの心臓が荒ぶる。限界を超えて駆動する。
僕を取り込もうと迫りくる暗黒を黄金の魔力が弾き返す。
いや、違う。
黄金の魔力に触れた途端、暗黒物質はその趣を変え、光の粒子へと変換されていく。
そう、僕は今、闇を抱いて光と成る。
あの黒い太陽と対をなす、第三の太陽へと僕自身が変貌するのだ。
「見てるかディーオ。未だかつて誰も見たことのない、この世の果ての世界が目の前に広がってるぞ――」
意識が溶ける。
恒星そのものと化した僕の自我が光の中へと解けていく。
最後に僅かに残った意志を総動員して愛娘へと出立を告げた。
「往こう真希奈。すべてを終わらせよう――」
『はい。どこまでもお供しますタケル様――』
* * *
「嘘、太陽が三つもある――!?」
「まさか、あれがタケルだというのか!?」
セレスティアと合流したエアリスは、風の結界を纏い、宇宙空間へと飛び出した。
そして、そこに現出した光景は、精霊魔法使いと精霊であったとしても、常軌を逸した光景だった。
「すごい……なんて綺麗なの」
セレスティアが呆然と呟いた。
まさに神話の世界の風景がそこには広がっていた。
彼方に燦然と輝く太陽と。
地球を侵略せんとする汚穢な太陽。
そして黄金の光を湛えた清廉な太陽。
それらが混然と同居する姿は、エアリスをして一瞬でも状況を忘れさせるほど幻想的なものだった。
「い、いかん! こんな――如何なタケルであってもこれは――!」
「エアリス!? 一体どうしたの!?」
全身の
高次元生命と量子結合したエアリスだからこそわかる。
タケルが今成そうとしていること。それは――
「タケルは今、自らをもってして、あの黒い太陽を相殺するつもりだ――!」
「え――、それって……お父様どうなっちゃうの!?」
「わからん。だが、如何に不死身とはいえ、ただでは済むまい!」
「そんな!」
そんな彼女であっても、踏み入れない領域がある。
恒星そのものと成ったタケルを止める手段などあるはずがない。
それでも、ただ黙って見ていることなど出来ようはずもなかった。
タケルを擁する太陽がさらに輝きを増す。
そして、距離を隔てているが故にゆっくりと、だがその実はとてつもない速度で動き出すのがわかった。
「嫌だ、もう主を失うのは――タケルを失うのは嫌だ!」
ディーオを失ったとき。
タケルを憎悪することでその悲しみを埋めたエアリス。
だが、今度は何を、誰を憎めばいい?
そんなものなど在りはしない。
タケルの代りなど存在しないのだ。
そして、ついに太陽と太陽とがぶつかり合う。
エアリスとセレスティアは知るはずもない。
あたかもそれは宇宙開闢の爆発。
さながらビッグバンのようであった。
「お父様ぁぁぁぁぁ――!!」
「タケルぅぅぅぅぅ――!!」
ふたりの叫びは。
光の中に虚しく消えた。
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