第142話 聖夜の動乱篇③ 突きつけられる非情な現実~幼馴染はテロリスト?

 *


 収録スタジオを有する都内のオフィスビル上階。

 大都会の街並みを見下ろすことができる広い部屋に心深は居た。


 室内は会議室というより応接室の様相で、内部は落ち着いた色合いの壁紙と照明、簡素だが座り心地のいいソファセットがあり、その対面には今アダム・スミスと秋月楓が腰を下ろしている。


「改めまして、先程は大変な失礼をいたしました。私の名前はアダム・スミス。ステイツに所属するエージェント・・・・・・をしております。同じくこちらが秋月楓。今回は日本への出向とあって同行をお願いしました」


「秋月です。彼はこの通り日本語が堪能ではありますが、相手が心深さんのような女性ということで私がフォローさせていただきます」


「は、はあ」


 心深はそわそわと落ち着かない様子だった。

 当然だろう。大御所監督と一緒に現れた怪しいニヤケ男が実はCIAという、映画や小説の中でしか聞いたことのない身分であり、それが自分のような一介の女子高生を相手にいったいどんな話があるというのか。


 そもそもCIAという組織はこうして身分を堂々と明かすことなどあるのだろうか。心深の中ではエージェントというと007のジェームス・ボンドのようなイメージが拭えない。身分を偽って密かに任務をこなすのではないのか、などと考えてしまう。


「彼は――監督は私と個人的な交流があるのです。聞けばあなたとは縁も所縁も深いとのことでしたのでサインを貰うついでにご紹介をお願いしたのです。いきなり私みたいなのが訪ねていっても警戒されてしまうだけですからね」


 その結果が、隣にいる秋月楓の拳骨である。

 自分の腕を引く前にまずは身分証を見せて欲しかったと心深は思った。


 というかサインを主目的にしておいて、紹介を『ついで』というあたりいい根性をしている。本人は気づいていないが、隣の秋月楓が「ああん?」という顔でスミスを睨んでいた。


「あの、あなた方がちゃんとした身分のヒトたちだってことはわかりましたので、本題に入ってもらえませんか?」


 心深は早くもうんざりし始めていた。

 何か用事があるのならさっさと済ませてほしい。

 心深は仕事の休憩時間を利用してスミスに付き合っているのだ。

 先ほどの失敗も併せて早く収録に戻らねば。


「実は私と秋月は国際テロ組織を専門に調査するエージェントでして。もう間もなく日本でも情報が公開される日米共同法案、『非対称戦争対テロ法案』に則った活動を行うべく日本へとやってきたのです」


「共同法案……? 非対称戦争……?」


 どれもこれも初めて聞く言葉だった。

 公開ラジオ放送のおかげで、かなり時事には詳しくなった心深ではあるが、それらは聞いたこともない。


 その法案とやらがどれほどの効力を持っているのかは知らないが、少なくとも国と国とが手を結んだ強固なものであることは想像できた。


「心深さん。この国で暮らしているあなたには想像し辛いかもしれませんが、世界は今、無数のテロリズムの恐怖に晒されているのです」


 スミスは語る。パレスチナ問題に端を発するアラブ諸国とイスラエルの対立。複雑化する中東問題へ介入してきたアメリカへの報復。その先触れであり象徴となったのがニューヨークで起こった同時多発テロ。


 心深が生まれる以前の出来事であり、教科書や当時の動画でしかみたことがない。人々の嘆きと絶望が溢れ、ビルが倒壊する瞬間は一生忘れることがないだろう。


 そして心深の記憶にも新しいのが、先日起こったばかりの国際医療組織『G.D.S』メンバーの人質事件だ。アメリカ軍の特殊部隊の活躍により、日本人も含めたスタッフは全員が生還した。でも一歩間違えば、全員の命が失われていたかもしれない。


 そういえば、と心深は思い出す。ラジオのゲスト対談でも話題になっていたが、今後東京オリンピックに向けて訪日外国人が爆発的に増えることが予想されている。観光客を偽装したテロリストが入国することも考えられるので、対策を講じる必要があると偉い政治家の先生も言っていたではないか。


「非対称戦争対テロ法案は、組織だけでなく、個人でテロ行為を働き、法治国家に害を齎す可能性のある潜在犯を取り調べ、逮捕する権限が含まれています。日本もこれに批准し、アメリカと緊密な連携を図っていくことになっています。私のようなエージェントが日本で自由に活動できるのもこのおかげなのです」


 ニヤけ顔を収め、真面目な顔つきでこちらを見つめてくるスミス。そうしていると確かにエージェントとしての貫禄というか、何か凄みのようなものがある。左右で虹彩の異なる瞳はとても深い色を宿していて、人生経験の蓄積というか、人間としての厚みのようなものを感じてしまう。


 ゴクリ。

 心深は我知らず喉を鳴らしてから口を開いた。


「そ、そうですか。でもそんなお話、私にされても困っちゃうというか。やっぱりそれってすごく大事なことだとは思うんですけど、私には遠いというか、現実味が全然なくて。その、すみません……」


「いえいえ、謝らないで下さい。それが普通の感覚だと思います」


 心深は「はあ……」と気のない返事をした。

 スミスはまるで、交通安全教室で小学校にやってきた指導員のような笑みを浮かべながら懇切丁寧に説明を続ける。


「でもですね心深さん、『戦争は遠い国の出来事』というのはもう過去のお話です。戦争には交戦規定があり、スタートとゴールがあったのはイラク戦争までです。現代ではいつ何時、一個人がひとりで戦争を始めてもおかしくない時代になってしまいました。あなたの隣人や友人がテロという卑劣な手段の走狗とされてしまう可能性だって十分に考えられるのです」


「私の友達が……?」


 真っ先に思い浮かんだのが朝倉希や支倉夢だった。

 いやいやまさか。善良そのものである彼女たちがそんなことをするはずなんてない。


 心深はムッとしてスミスを見つめた。

 自分の友達が不当に貶められているような気がしておもしろくなかった。


 そもそもどうしてそんな話を自分にするのかという本題がまだ語られていない。

 一方的にこちらの不安を煽っておいて何がしたいのだろう。


「いずれ日本の教育にも大きな改革が行われます。現在のような国際社会から切り離された画一的で古い教育は終わります。そして一部の者にとって都合のいい情報しか与えないメディアコントロールも淘汰されていくことでしょう」


 スミスはどこか得意げな顔をして話を締めた。

 まるでそれが自分の手柄とでも言うように、どこか自信に満ちた顔している。

 心深はやっぱり現実味がないまま「そうですか」と聞き入れるのだった。


「前置きが長くなって申し訳ありませんね。本題はここからになります」


 ようやくか。心深は失礼だとは思いながらもため息をついてしまう。


 正直言って早く終わらせて欲しかった。本題とやらがどんな内容であっても、どうせ自分には関係のないことだ。スミスは先程までの長広舌がウソのように「大変言いづらいことなのですが」と切り出した。


「実はですね、私達がこの日本にやってきたのはもちろん捜査のためなんです。過去にテロの疑いがあり、まさにこれからテロを実行するかもしれない第一級の捜査対象が日本に潜伏しているとの情報をつかんだからなのです。そのために是非あなたの協力が必要なんですよ」


 ようやく話が見えてきた。

 だが、自分のような女子高生に協力とはどういうことだろう。

 心深は言葉を選びながら慎重に問いを投げた。


「えっと、それは捜査自体に手を貸せということでしょうか。私なんかでお役にたてるなら、お力になりたいとは思いますけど……」


「本当ですか、ありがとうございます。でも――役に立つ立たない、などという問題ではありません。なんてったってあなたは当事者・・・なんですから」


「え? それってどういう……」


「驚かないで聞いて下さい。実はその捜査対象となっている容疑者の名前は――」


 ぐにゃり、と心深の視界がゆがむ。

 右に引っ張られるような感覚がしてとっさに手をつく。

 平衡感覚を失い、ソファの上にへたりながら、心深は溺れるように「ぜいはあ」と荒い息をついた。


「大丈夫ですか心深さん」


「はい……。いえ、ちょっと待って下さい」


 まさか。まさかまさかまさか……!

 こんなところであいつの名前が飛び出してくるなんて思いもしなかった。


 耳鳴りが非道い。身体の内側で心臓が爆発している。

 鼓動が一回する度に、ずくんずくんと指先の毛細血管が悲鳴を上げる。


 今自分は息を吐いているの吸っているのか、そんなこともわからない。

 少しでも気を抜けば意識を失ってしまいそうだ。


 だがそれでも、心深は問わねばならない。

 聞き間違いであって欲しいと願いながら。

 何かの冗談であって欲しいと祈りながら。


「大丈夫です……。もう一度名前を――言ってもらえますか」


「はい――。『エンペドクレス』。あるいは『タケル・エンペドクレス』。そう名乗っている男を、あなたは知っているはずですね?」


 スミスが口にしたのは、間違いなく心深の幼なじみの名前だった。

 正確には再会してからの彼が何故か名乗っている偽名である。

 ぎゅうっと胸の上を握りしめながら、心深は喘ぐように吐き出した。


「ウソです、何かの間違いです……! あいつがテロだなんて、テロリストだなんて! 絶対にそんなことあり得ません……!」


「落ち着いてください心深さん」


 そう言って割って入ってきたのは秋月楓だった。

 よく見れば隣のスミスの肩に手を置き、その指先には力が込められている。

 急ぐな、と窘めているようにも見えた。


「あくまでも現時点では容疑者という扱いです。ですが当局では限りなくクロに近いグレーだと考えています。あなたと彼は家が近所で、幼い頃からお互いを知っている。そこまではよろしいですね?」


 秋月楓が大きなバイザー越しに心深を見つめてくる。

 下手な言い訳など通用しない相手なのだと心深にはわかった。


「は、はい。でもあいつ――彼は『成華タケル』って名前のはずで、いえ、何故か今は『エンペドクレス』って名乗っているようですけど……」


「なるほど、『エンペドクレス』が偽名なのですね。新しい情報です。テロリストによくある複数の名前を使い分けているのかもしれません」


 心深はハッとする。

 自分が口にした言葉のせいで、彼に不利な情報を与えてしまったと思ったからだ。


 だがよく考えれば悪いことをしている(可能性がある)のは彼の方。この人達は公的な立場を持った捜査官であり、自分は一般人の立場から捜査に協力するのは当然のことで……。


 いや、そもそもヒトに言われるがまま、あいつを犯罪者扱いしてしまっていいのだろうか。まず自分だけでも彼を信じるべきでは?


 だが、帰ってきてからのあいつは明らかにおかしい。もしもその理由がスミスたちの言うテロと関係のあるものだとしたら……。


 いやでも、いやいやそんなはずは――!


「捜査対象である彼を調べていく内にあなたの存在が浮かび上がりました。タケル・エンペドクレス、あるいは成華タケルという人物を昔からよく知るあなたにお聞きしたいのです。何か彼について、不審な行動に心当たりはありませんか」


 楓の問いかけに心深は静かに首を振る。

 不審な行動と言われても、そもそも再会したのはごく最近のことだからだ。


「例えばそう、学校にも行かずにずっと部屋に閉じこもっていたとか、インターネットを通じて海外の何者かと頻繁に連絡を取っていた様子があったとか、あるいは何日も家を空けていたのに、ある日突然ふらっと帰ってきたなどなど。そういったことはありませんでしたか?」


 心深の目が見開かれていく。一瞬黙っていようかとも思ったが、自分のウソなどスミスや楓には即座に見ぬかれてしまうだろう。


 そもそもタケルの身辺調査もしているのなら、ある程度のことも知っているはずだ。恐らく当事者である自分の口から情報を聞き出し、矛盾がないかを確認する意味もあるのだろう。


 心深は観念するように、口元を手で覆い、目を彷徨わせながら、血を吐くように絞り出した。


「あり――ます」


「それはどのような?」


 言葉尻に被せるような即座の問い。これはスミスだ。

 膝の上に肘を立て、組んだ手の上に顎を乗せている。


 優しい笑みを浮かべているのに、有無を言わせない迫力がある。

 心深は涙声になりながら懸命に言葉を探した。


「はい、でもそれは、その……」


「心深さん。どうか正直に話して下さい。これは彼のためでもあるのです」


「え……、あいつのため、ですか?」


 スミスの言葉に心深は食いつく。

 こんな絶望的な状況下でまだ彼に希望の芽があるというのか。

 だが心深の方こそ、その小さな希望に縋るしか道は残されていなかった。


「テロ組織というのは慢性的な人材不足を抱えています。近年の手法としてインターネットを通じて大々的に仲間を募っていることがあるのです。フェイスブックやツイッター、あらゆるSNSを使い、最初は共通の趣味を持つ友人を装い、言葉巧みに近づいて、しっかりとした交友関係を構築した後に勧誘を開始する。タケル・エンペドクレスもまた、そうして巻き込まれた被害者のひとりなのではないかと我々は考えています」


 ISISを始めとしたテロリストたちは、大企業顔負けの求人戦略を展開している。それこそハリウッド映画顔負けのプロモーション映像を作り出し、さも自分たちがカッコいいことをしているのだと見るものに思い込ませるのだ。


 そしてもし仲間になった暁には、能力次第で人生をやり直せるだけの報酬を約束する。お金はもちろん、手厚い待遇――衣食住から、多くの協力者支援者がそれを生涯に渡ってバックアップするのだ。


 確かにタケルは引きこもっていた頃からネットゲームばかりをしていた。あくまで例えばの話だが――直接顔を合わせずに友達になったゲーム仲間などに、そのようなプロモーション映像を見せられたり、毎日毎日少しずつ、勧誘や誘惑を繰り返されたとしたら……。


 そしていつの間にか、そうとは知らずにテロリストの片棒を担ぐような真似をして、無理やり仲間に引きこまれたのだとしたら。


(あり得るかもしれない……!)


 誰かに騙されでもしないかぎり、あんなにものぐさだった幼なじみが行動を起こすなんて絶対にありえない。やっぱりあいつは悪いやつに騙されて変わってしまっただけなんだ……!


 色々と腑に落ちなかった点と点が繋がっていく。握りしめた拳を口元にあてがい、急に黙りこんでしまった心深に畳み掛けるよう、スミスはさらに彼女が看過できない爆弾を投下する。


「さらにテロリストが勧誘で使う手段として――」


「スミス、私から話します」


「……そうですね。その方がいいでしょう」


 スミスはゆったりとソファに背を預ける。

 楓は心深の心情を慮るよう沈痛な面持ちで語りかけた。


「どうか、落ち着いて聞いて下さいね心深さん。テロリストたちが特に欲しているのは若い未婚の男性なんです。体力的に優れていて、訓練も施しやすい。知能が高い者なら喉から手が出るほど。そんな男性を仲間に引き入れるための手段として奴らは専用の『配偶者』を用意してやることもあるのです」


「は、配偶者って……!」


「ええ、お察しの通り、自分たちの仲間になれば『妻』を用意してやる、と。そうして多くの男性を戦力として獲得しているんです」


「……そんな!?」


 心深の頭に浮かんだのは、誰であろうエアリスであり、まだ見ぬセーレスの姿だった。


「想像して下さい心深さん。例えば自分の人生で躓いてしまったヒト……望む学校に進むことができず、出世コースから外れてしまったヒト。金銭的な不安から結婚したくとも出来ないヒト。高い技術を有しながら周りに馴染めずに、くすぶり続けているヒト。テロリストたちはそんな世間から爪弾きにされた者達の心の隙間に漬け込んできます。人生をやり直せる、高い報酬を確約する、自分たちの仲間になればそれを保証する、と」


 それもまた、正しくタケルそのもののことではないか。

 能力はありながらも自分を表現することが極端に苦手だった幼なじみ。


 周囲に誤解され、まともな学校生活も送れず、あのまま引きこもっていたら確実に落伍者になっていただろう。


「そんな男性たちに、異国のとても綺麗な女性を伴侶とさせることで、相手の身も心も骨抜きにしてしまうのです。そういう女性たちはどこから連れてこられると思いますか?」


「どこから、なんですか……?」


かどわかすんです」


 心深が息を呑む。

 およそ日本の女子高生には想像もできないような現実が世界には溢れている。同じ女性である楓から語られる真実の一端に、心深は大きなショックを受けていた。


「地元の学校に通う女学生を一斉に誘拐したり、内戦で身寄りを失った若い少女を無理やり連れてきたり、人身売買ビジネスで家族から二束三文で身請けしたり。そうした女性たちもまた洗脳され、男性を悦ばすための技術を教えこまれ、良き妻を演じるよう徹底的に指導されます。中には一人の男性に対して、複数の女性をあてがうこともあります。所謂ハーレムですね。一夫多妻の中東圏の国では本当にある話なのです」


「あ、あああ……!」


 なんてことだ。

 タケルはそれほどまでに大きな事件に巻き込まれていたのか。


 彼がいなくなる直前――そんな風に騙されていたからこそ、毎日押しかけてくる心深自身を嫌ってもいたし、遠ざけようとしていたのだ。


 そうだ、きっとそうに違いない。そして恐らく、今タケルの隣にいるエアリスこそが、タケルを骨抜きにした憎きテロリストの手先なのだろう。


 半年前。

 彼の家が火事になった時、あれこそが旅立ちの狼煙だったのだ。


 タケルは何者か――テロリストに手引され、国外へと脱出。そこで過酷な軍事訓練を施されたのだ。


 そうして晴れて正式メンバーとなった彼は上が命じるがまま、我が身と引き換えにテロリズムという卑劣極まりない手段を実行し――成功した。


 その証拠があの肉体。全身がボロボロの傷だらけ。右腕さえ失って、不自由な身体となってもなお、彼の隣には常に献身的に支えてくれる妻の存在がある。


 それは彼に与えられた報酬――どんな命令にも従い、男の欲望を喜々として受け入れてくれる都合のいい女。


 対外的には自分の妻ということになっている『奴隷』である。あらゆる性技を尽くして男を奮い立たせ、望みとあれば喜んで懐妊や堕胎もする。


『我が主を侮辱するな――』


 彼女が――エアリス先輩がそう言っていたのは、誇張でもなんでもない、奴隷の主人としてタケルを慕い敬っていたからだったのだ。


(なんてことなの――私は誤解していた。あいつがこんなとんでもないことになっていたなんて! 私の気持ちをぶつけてる場合なんかじゃなかった、あいつは私が助けてやらないといけなかったんだ――!)


 止まらない。

 心深の妄想は加速していく。


 タケルは被害者。

 エアリスはテロリストの手先。


 子供は偽装。

 主従関係も偽り。


 転入してきたのは日本でのテロ活動のため。

 心深を拒絶したのは自分の本当の正体を知るものだから。


 心深の瞳にありありと憤怒の色が宿っていく。

 それはタケルを謀り、利用する者たちへの怒り。


 奴隷でありながらタケルの傍らに居続けるエアリスへの悋気。

 心深の中でやり場がなかったはずの鬱屈とした気持ちが確かな輪郭を持ち始める。


 その形がスミスと楓の都合のいいものへと形成されていることに、本人は気づいていなかった。

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