夢見ごち
最近夢を見る。
いや、そのこと自体はごく普通の事だ。
問題なのはその内容だ、とにかく現実的なのだ。夢であるというのに。
そんな夢を毎晩のように見る、最初のうちは夢を夢であると自覚して割り切れた
だがそんな生活が半年も続けば、実際にあった出来事との区別がつかなくなる。
夢は曖昧なものである、曖昧であるからこそ、夢であった出来事が本当にあったことのように記憶に刷り込まれているのだ。
友人との会話をしていると、たまにかみ合わないことがある。そんな話をしたか?と尋ねられたこともある
夢の中でした仕事のデータを探したり、それがないことを同僚や上司に確認をして、そんな仕事はなかったと、そこでようやく理解できた。
もちろん医者に診てもらったこともある、ただやはり夢というのは医者にもどうしようもないもので、手の出しようがなかった。
正直怖かった、仕事でもプライベートでもその場所での記憶がチラつく。
でもそれが夢での出来事か、現実での出来事なのか、自分だけで確認するすべがないのだ。
実際にあったことをメモに取る、という対策を考案したこともある。
夢であるなら記録はされてないはずだし、メモを確認すれば一目瞭然だろう。
ただそのこと自体現実的ではないのだ。
会話の内容をメモするのはいい、ただその内容に漏れや齟齬がないようにするとなるとメモの回数や量、正確に書き写すだけの記憶力も求められる
仕事ではメモは有効だったので、そこでの問題はなかったし、むしろ仕事に対しての姿勢が良いとされて、評価の対象となっていた。
問題は人間関係だった。
この症状、いや病気になってからは極端に人と接することがなくなった。
仕事ならともかくプライベートでの、ただの雑談でさえメモを取るような人間は、はっきり言って不気味だ。
そうすると必然的に人とのかかわりがなくなっていく。
そうしているうちに心が崩れていく。
誰にも理解されることなく、周りから孤立していく。
打ち明けることも、共感されることもなく、ただ時間だけが過ぎる。
この生活が元に戻るころには心は果たして正常であるのだろうか。いやきっと壊れているだろう、今の状態ですら普通とは言えないのだから。
そうしてまた眠る、今日は夢を見ないようにと願いながら。
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