第12話 パンで異世界の物価がわかるなら外交官やれ!
宿の料金は1日いくらではなくベッドで一回寝るといくらという設定料金である。
一回、400zejであり、低級の回復薬が一つ10zejで、木の棒の買取額が1zejであることから考えると日本円で………ゲーム通貨が日本円に換算できる分けねーだろ!
異世界ものの主人公がパンをみて日本円に換算していくらとか言ってるが、食糧危機で食料がクソ高いとか、その逆とかあるかもしれないのに、よくパン一つでわかるものだ。
そんなに頭がいいなら普通のサラリーマンやってないで外交官にでもなったら良かったんじゃないですかねぇ!!!?
ついについた宿屋は見た感じ普通の建物である。
見た目は同じ、手抜き乙。
違いはドアが入れるか入れないか。
後者なら店か宿。
壁にめり込みながら歩き続けている宿屋の受付を無視して部屋のある二階へ行く。一階は酒場があり行くたびにチンピラに絡まれるというイベントが発生してしまうため無視に限る。
酒場はめちゃくちゃデカくてどう見ても宿屋の総面積の6倍くらいあるのだが、ここの宿屋には空間魔法使いとかでもいるのだろうか?
階段の段差の間にある見えない時空の狭間に足を取られないようにジャンプしてかわす。
すでに犠牲になったNPCが挟まって身動きが出来ずに関節をあらぬ方向に曲げて乱回転していた。
相変わらずバグってんなー。
扉をガチャリと開けると目の前に飛び込んでくる部屋。当たり前のようで当たり前じゃない。
ゲームならロード画面に入るからだ。
部屋と廊下は別マップで地続きではないのが常識だ。
こう見るとへんな感じだよな。
この世界ってなんなんだろうか。
ついつい忘れてしまいそうになるがこのゲームpcゲーなんだよな。
それがいつのまにかVRみたいになってて。
もとからこんな世界だったような気もしてきた。
なんだろう、自分が今までpcでゲームしてたのか、今みたいにVRみたいな空間でゲームしていたのかわからなくなってきた。
しっかりしろSHAO!
天才糞ゲーマーだろ!お前は!
しっかりしろと自分に言ってみるが、不思議に感じることは尽きない。
何故だろうか、一日中ゲームやってる俺はこの世界に来てどうしてこんなに動ける?どうしてありえないようなスピードの中意識して反射できる?
pc画面では神視点からキャラをみて他のに、画素が荒くてNPCの顔なんて見えなかったのにどうして顔がわかるんだ?
なんでこの世界に"来た"って気づいた時は荒かったのに今はこんなに綺麗なんだ?
まるで本物の世界みたいだ。
冷たい、暑い、眩しい。
なんだよこれ。
どうなってんだよ。
…………あーもう!分からん!こういうのは寝て頭をさっぱりさせるに限るな。
はー、俺らしくない。
こんなこと考えたって無駄!無駄!無駄ァ!!
ゲームガチ勢だろうが、命かけてんだろうが!
ゲームだろうが現実だろうが夢だろうがなんでもいい!
とにかく、ゲームっぽかったら全力で楽しむ!ルールがあったら破って自由に楽しむ、きつかったらバクを使ってズルをする!自分よりいい環境のプレイヤーがいたら寄生する!NPCがいたらものを奪う!
これに尽きんだろ!
さっきの新規プレイヤーもどきにしろ今後どうなるか知らんが、NPCが喋るとかにしろ俺のプレイスタイルは普遍。
クズプレイ一択。
助けない、足を引っ張る、あざ笑う。
なんだよ中二病か?
自分の存在意義とか意味わかんねーよ!意味なんてねーよ!親がやることやっちまったから生まれただけで俺たちが生きていることにも意味なんてない。
他の動物を殺して自分が生きているからってそれを重みに感じて自分の行動を制限するなんて馬鹿馬鹿しい。
好きなようにやって好きなように生きる。
生きるのに疲れたら闇の炎に抱かれて死んでもいい。まあ自由だしね。
俺がゲームでもゲームかわからない世界でも変わらず暴虐な振る舞いをするのも全然いいということだ。
よし、うん。
あー、無駄なこと考えちまったな。
あー意味ねー、ゲームの中で悟ってんじゃねーよ。ダセー。はぁ。
自分の信念を思い出せたことだし寝るとしますか。
"いつも通り"ベッドを殴った瞬間、システム的に意識は遠のき目の前は暗くなり、所持金が勝手に減っていくのを確認した。
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