第11話支配下の街

軽く頭をさげ、ミリアは王女たちに挨拶した。

ふくよかな胸に右こぶしを当て、ミカは静かに目を閉じる。

それが流星騎士団の敬礼であった。

ユマも同じかたの敬礼をする。

余った袖口がかわいらしい。

「お久しぶりです。王女さまがた。ご無事の帰還なりよりです」

とミリアは言った。

「まだ二人しかもどってないけどね」

ため息まじりにミカは言った。

彼女は六番目の王女。

ユマは四番目の王女。

残り四名の姉妹がまだ帰還していない。

無事に星騎士を連れて王国に戻ってくることを、ミカとユマは切に願っていた。

「王女さまがた、星騎士のお二人、ご案内いたしましょう」

ローブのフードを深くかぶり、ミリアは歩きだした。


街いく人々は皆黒い服を着ていた。

まったく同じデザインの服を身にまとっている。

まったく同じ。

皆が同様のデザインの服を着用している。

誰ひとり違う服を着ているものはいない。

こうも皆が同じ服を着ているのは、一種の不気味さを放っていた。

右手首には銀色のブレスレットがはめられていた。

奇妙に思い、守は街の人々をじっと眺めた。

彼らは帰路を急いでいる。

その形相は必死だった。

まるで見えない何者かに追われているようだ。

街中に耳をおおいたくなるほどのサイレンが鳴り響いた。

鼓膜が痛いほどの音量であった。

その音を聞いた瞬間、街の人々は慌てて、建物の中に入っていく。

サイレンが鳴りやむ頃には、ほとんどの人々は建物内に入っていた。

ひとりつまずき、外に取り残されたものがいた。

「あっだめ」

短く、悲痛な叫びをミリアはあげる。

突如、右手首のブレスレットが光だし、爆発した。

「いやだいやだいやだ‼️‼️」

その人物は叫ぶ。

声がかれそうなほどの悲鳴が響く。

肉片と血が地面に飛び散り、焼き焦げ、穴だらけになった衣服と死体だけが残った。

それは一瞬の出来事であった。

絶句し、守たちはその光景を見た。

「これが帝国に支配された街のありようだ。彼らには自由はない。平等と公平の偽名のもと街の人間は同じであることを強要されている。少しでも違うことをすればあの管理システムが発動し、結果はあの通りだ」

地面に視線を落とし、ミリアは涙まじりに言った。

「じゃあ何か、あの人は時間を守れなくて死んだのか。そんなのはひどい、ひどすぎるのだ」

手の甲で涙をぬぐいながら、ユマは言った。

「でも、なんで、ミリアはつけていないのだ」

とユマはきいた。

「私たちシルバードワーフ族は帝国から人として扱われなかったのです。だが、それが幸いしてシステムの外にいることができました」

ミリアはかすれた声で答える。

「さあ、急ぎましょう」

振り返ることなくミリアは歩みを進める。守たちはそのあとを沈黙し、どうにか気持ちを落ち着かせながら進んだ。

やがて、廃屋といっても過言ではない工場跡地にたどり着いた。





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