第5話王女ミカ

少し冷たい風が頬にあたり、心地よい。

どこまでも続くのではないかと思われるほどの緑の草原。

空は高く、はてしなく青い。

雲が空を駆けていく。

陽のひかりが降り注ぎ、一人の少女を照らしている。

その草原の海に彼女は立っていた。

金色の彼女の髪がその陽のひかりを少しだけ反射させていた。

青い瞳は宝石のようにキラキラとしていて、吸い込まれそうになるほど魅力的だ。

アーモンド型のその瞳でじっと守の目をみている。

視線があうと守は体が何故か熱くなるのを感じた。

すらりと背が高く、その女性的な体のラインを強調するような軍服を着ていた。

軍服のデザインはナポレオン帝政時代のものに酷似している。

細い腰に巻かれたベルトにはレイピアがぶら下がっていた。

黄金の髪が風でなびくのを押さえながら、彼女は、

「はじめましてっていうのも変だけど、この姿で会うのは初めてね」

と言った。

にこやかに、軽やかに彼女は微笑む。

これほど可憐な笑みを守は生まれてこのかた見たことがなかった。

「私の名はミカ・エル・レイラ・ライゼンベルグ。ライゼンベルグ王国の第六王女よ」

ふくよかな胸元に手をあて、彼女はそう言った。

そのあと、彼女はゆっくりとその白い手をさしだした。

その手を守は握る。

思ったよりもざらつき、硬い手のひらに彼はとまどった。

「幼いときから剣を握っていたからね、こんな手になっちゃった」

ミカは言う。

たしかに硬いがそれが不思議と心地よいものだと守は思った。

女性にしては硬いが、暖かいその手を握ると守の心は落ち着いた。

「君はミカなのか……」

言葉をふりしぼり、きく。

「そうよ。あなたとシリウスと共に戦ったサポートAIのミカは私よ」

ミカは言った。

「それってどういう……」

混乱する頭をどうにか落ち着かせながら守はきいた。

「私はある使命をはたすため、あなた方の世界のゲームのシステムを利用していました。精神だけを転生させ、星騎士を完璧に操り、最終ステージであるルシファーの迷宮をクリアできるほどの腕をもつものを探していたのです」

「それが、僕っていうわけかい」

「そうです。お願いがあります。マモル、私とともに世界を救ってほしいのです」

ミカは真剣な眼差しでマモルをみつめる。

その目には冗談の色は一ミリも塗られていない。

彼女は本気でその言葉を口にした。

と、その時だ。

耳をおおいたくなるぐらいの轟音が天空に響いた。

大きな大きな影が二人をおおう。

銀色に輝く戦闘機が大空を旋回し、人型に変形し、着陸した。

油断すると吹き飛ばされるのではないかと思われる風に彼らは襲われた。

体が揺らぎ、思わずミカは守の腕に抱きついた。

金色のミカの髪が守の顔をなでる。

「あ、あれはシリウス」

目の前の銀色の機体を見て、守は言った。

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