第3話魔王との戦い

神々しいほどに美しき八枚の翼を持つ巨大な天使は、宇宙空間を優雅に浮遊していた。


「さすがにでかいな」

「全長約75メートル。シリウスの5倍といったところかしら。質量は測定不能。心霊的存在と認識してるわ」


ぐるりと周囲を旋回する。

光輝く堕天使はシリウスを視認したようだ。

くるりと首をむける。

その目は小うるさいハエをみつけたのと同様の色であった。


「くるわ」

ミカが危機を察知し、警告する。


八翼が大きくまう。

白銀色の羽が打ち出され、そのすべてがシリウスめがけて迫り来る。


パラパラパラ。

バルカン砲の一斉射撃。

的確にそれらを打ち砕いていく。

だが、羽の数はあまりに多い。

視界一杯に展開する鋼鉄の羽を駆逐すべく、守はシリウスを操る。

右手に装備したオリハルコンダガーで素早く、羽を切り刻む。

飛来した羽のほとんどを打ち落としたシリウスは距離をとるため、飛行モードに変更し、真空の空間をかけた。

迫り来る第二波の攻撃を空間機雷をばらまき、防ぐ。

機雷は何度も爆発を繰り返し、宇宙の景色を真紅にかえる。


「メガ粒子砲準備、全部を奴に撃ち込む」

「わかったわ。でも、その間他の攻撃はできないけど、いいわね」

「ああ、わかってる。全部、かわす」


かすかな振動を繰り返し、エネルギーがメガ粒子砲に集約される。

魔王ルシファーは三度羽ばたき、空間一杯に白銀の羽をばらまいた。

それらすべてがシリウスめがけて、襲いかかる。

最高速度でシリウスは飛行する。

魔王の羽はそれをおいかける。

集まった羽は純白の大蛇に見えた。

大蛇がシリウスを飲み込もうと彼を執拗におう。

だが、ほんのかすかではあるが、シリウスの飛行速度のほうが速い。


テン、ナイン、エイト……

ミカがカウントを始めた。


流星となって漆黒の闇を駆け抜ける。

そのほんのすぐあとを羽の軍勢が追尾する。


セブン、シックス、ファイブ……


かすかにかかる重力。

心臓が高鳴り、血液が沸騰するに似た感覚。


フォー、スリー、ツー、ワン、ゼロ‼️‼️


「メガ粒子砲発射‼️‼️」

守がコクピット内で叫ぶ。特に叫ばなくても発射ボタンを押せばよいのだが、この行為はやめられない。

脳内にアドレナリンがどくどくと流れる。


圧倒的粒子の束が集約し、超高熱のエネルギーが魔王ルシファーに向け発射される。光が闇を突き抜け、ルシファーの白銀の翼を撃ち砕く。

翼を撃ち抜くだけでなく、かの巨大な肉体を貫通し、闇へと走り去った。

三度分のエネルギーを一度に集めた撃ったため、破壊力は絶大であったが砲身が焼き焦げ使いものにならなくなった。

魔王ルシファーの肉体に巨大な風穴が空いたため、ぐぐぐとその身を屈めた。

白く秀麗なルシファーの顔が眼前にあらわれる。

額には光を反射するダイヤモンドが見えた。

「あのダイヤモンドがルシファーのエネルギー源よ」

ミカが解析し、そう言った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る