第2話魔獣兵の軍団

遠くの星々がきらめく。

きらきらと輝くそれを見る度に、実際の宇宙空間もこんなんじゃないかと思わさせられる。

フットペダルを踏み込むとかすかな重力を感じる。

宇宙空間を高速で飛行する。

機体を旋回させ、飛行モードへと変形させる。グラディウスとオリハルコンダガーは機体内部へと収納された。

シリウスは機動力に特化した機体であった。

守は自らの機体を高速機動可変人型兵器へと進化させた。

火力メインの機体やバランス重視の機体でもよかったのだが、守はスピードタイプを選択した。

操縦するときの爽快感はやはりこのタイプが一番だ。

脳内物質が頭のなかをかけめぐり、体が妙に熱っぽい。

ドクドクと血液が血管内を駆け巡るのが、心地よい。

快感にも似た刺激が体内を支配する。

これがあるから、このゲームはやめられないのだ。


やがて星の海に奇妙で奇怪な敵が出現した。

一体、また一体。

それは次々とあらわれる。

巨大なハエ。

翼の生えた蛇。

大腸に毛が生え、うにうにとうごめく物。

虚ろな目をした巨人。

山羊の頭をした女。

ルシファーの配下である魔獣兵と呼ばれるものたちだ。

宇宙空間に漂う彼らがシリウスを発見し、破壊すべく襲いかかる。

猛スピードで接近する魔獣兵を紙一重でかわす。

すれ違う寸前にハエの魔獣兵の腹部にバルカン砲の弾丸を叩きつけた。

一瞬にして敵は四分五裂し、汚ならしい肉塊へとかわる。


「ミカ、敵の数は」

「5684体ね」

「多いな」


左右の操縦桿を握る手に力が入る。

フットペダルを最大限踏み込む。

バルカン砲を高速連射すると密集していた魔獣兵たちの間にわずかながら、隙間ができた。

その隙間の幅はシリウスと同程度だ。

迷うことなく守は最大スピードでその隙間に機体を滑りこませ、一気に駆け抜けた。

中央突破に成功した守は魔獣兵の軍団にむかって機雷をばらまく。

天頂方向に機体を上昇させ、機雷原にむかって追尾ミサイルを発射した。

追尾ミサイルは機雷にすべて命中し、爆発を何度も何度も繰り返す。

紅蓮の炎の渦は魔獣兵の軍団をすべて飲み込み、彼らを虐殺する。

燃やしつくし、破壊する。

炎の乱舞を背にシリウスはルシファーの宮殿に向けて進路をとった。


巨大で豪華な宮殿だった。

黄金色に輝くそれはまぶしい。

壁には古今東西の美術品や絵画に囲まれていた。

ギリシャ神殿を思わせる柱のなかをくぐり抜けていく。

壁から石像がのそりのそりと這い出した。

石の悪魔ガーゴイルだ。

近接戦闘をするため、人型モードに切り替わる。

瞬時に人型になったシリウスはその体を銀色を光輝かせながら、ガーゴイルに白兵戦を挑む。

グラディウスの切っ先ガーゴイルに向け、何度も刺突を繰り出す。

ガーゴイルは円月刀でそれを迎え撃つがシリウスのスピードのほうが、若干であるが速い。

受け身一方のガーゴイルに渾身のエネルギーをこめ、グラディウスを撃つ。

グラディウスはガーゴイルの巨大な体を木っ端微塵に砕いた。


何百体もの敵をほうむり、守はついにたどりついた。

八枚の翼を持つ、美麗なる魔王ルシファーのもとに。

明けの明星とうたわれた魔王が守の眼前に存在した。

「ついに来たわね」

サポートAIのミカがそう言った。



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