シューティングスター・ナイト・クロニクル

白鷺雨月

第1話星騎士シリウス

彼の休日の楽しみはアーケードゲーム「シューティングスター・ナイト」をプレイすることであった。

コクピットに乗り込み、本物の機体を操縦しているような感覚で遊ぶアーケードゲームである。

画面も本物ではないかと思われるほどリアルで、宇宙空間、洞窟内部、深海、などステージはさまざまであった。

彼、結城守はこのゲームの最高得点記録保持者の一人であった。

プレーヤーは最初に素体と呼ばれる人型のロボットが与えられる。

敵を撃破するごとにポイントが加算され、それを武器やアイテム、特殊装備などと交換し、素体を育てていくのだ。

育成ゲームとしての側面もある。

結城守の操る機体の名はシリウス。

彼は今、最終ステージ「ルシファー宮殿」の攻略にむけて、機体を発進させようとしていた。


「こんにちは、マモル」


女性の声がコクピット内にこだまする。

耳にここちよく、少したかい音の声。

鼓膜の振動すら心地よいものにかえてくれる。

きっと有名で人気のある女性声優が声をあてているにちがいない。

守はそう考え、ネットを検索しまくったが、答えは出なかった。


「やあ、ミカ」

守は返事をする。


返事をした相手はサポートAIのミカである。ミカと名付けたのは守である。この機能もゲームをプレイして得たポイントで付け加えたものである。

ゲームをプレイし、ポイントを得、機体を少しずつ強化する。

機体は愛情をこめれば確実に成長し、強くなる。

手ごたえを実感できる。

生きているという実感に近い。

また、オプションとしてサポートAIとの会話を楽しめる。

プレーヤーの中にはAIとの会話に夢中になり、それが目的になって没頭するものもいる。

ゲームの楽しみかたは人それぞれだ。

実際の社会はうまくいかないことが多い。ゲームぐらいは自由に楽しみたい。

彼はそう思うのだった。


「ついに最終ステージに挑戦するのね」

「ああ、そうだよ。その為にこのシリウスを育ててきたんだから」

「了解。それじゃあ、装備の確認をするわね。

バルカン砲一万発。

空間機雷二千発。

自動追尾ミサイル八百発。

メガ粒子砲の射撃回数は三回よ。

近接戦闘様にスピアはグラディウス。ダガーはオリハルコンダガーを装備。

対ショックシールドのエネルギーは百パーセント。今もてる最高の装備よ」

「それで攻略の可能性は?」

「50パーセントね」

「それでも50パーセントか……」


最終ステージはまだ誰もクリアしたことのない超難関ステージであった。

幾人ものプレーヤーが挑み、その数だけ敗れていっている。


「さあ、行こう」


「進路オールグリーン。カタパルトにシリウスを移動させます。

発進秒読み開始。

スリー、ツー、ワン、ゼロ。

星騎士シリウス、ルシファー宮殿に向けて発進します」


シリウス発進。




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