第2話


 うおっしゃぁぁぁぁ!!

 うぉぉ! うぉ、うぉぉおお! うぉっしゃぁぁぁらぁい!

 しゃしゃしゃぁぁい! うおっしゃぁぁぁい!!


「だからね、あたしとしても」


 聞いたか! みんな聞いてくれたか、聞いたよなァ!

 デート! デートの誘い! 今までデートの誘いをしたことは何度もあった! だけど、俺をデートに誘ってくれる子はいままで一人だっていなかった! え? 俺が誘った結果はどうなのかって? 全戦全敗勝率脅威の0%だよ!


「だから、あんたには悪いと思うけど」


 しかも! しかもしかもしかも! 相手はあの赤音里香あかねりか! 俺と同じ陸上部所属のスポーツ少女! 中学は別の学校だったけど、大会ではよく見かけててその時からずっと魅力的な女性だなと惚れていた相手!


「協力を頼みたくて」


 正義感が強く、真面目で、人に優しく自分に厳しい姉御肌! なによりスポーツ少女!! キリリっと凛々しい瞳に健康的に焼けた肌、絹のように美しい黒髪のポニーテールからちらりと見えるうなじが普段の姿とは異なるセクシーギャップを生み出していてもう……好きッ!!

 いつも教室では女子に囲まれて明るい声で笑っているあの赤音がッ! 俺を! デートに誘ってくれふぉぉぉぉおお!!


「ちょっと……聞いてる?」


「赤音ッ!」


「おわッ! きゅ、急に叫ばないでよ、で、大丈夫かな」


「勿論だ! 結婚しよう!」


「……は?」


「分かっている! 確かに俺はまだ高校生だ! 金だって稼げないただの子どもだ! だが君のために必ず良い大学に入ってきちんと就職して君と一緒にこれからを歩いていくと約束する! だから!」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って! なんでそうなる!?」


「俺も君が好きだ! 赤音!!」


「すッ!? ち、ちがッ! あた、あたしはそんなんじゃなくて!!」


「え? ……違うの?」


「だから、さっき言ったけど」


「俺も愛している!!」


「愛ッ!? も、もももももっと違うわ馬鹿ァァァァ!!」


「ごふォ!?」


 気持ちのこもったさきほどの告白の時以上に顔を真っ赤に染めた彼女の拳が俺の腹に突き刺さる。ああ、やっぱりさすがは赤音だ。殴る時の腰の使い方がもう芸術のように美し、痛い……。


「お、ぉぉ、お……いぃおぃ、……」


「はぁ、はぁ……! あのなァ! 人の話を聞けッ!!」


 どうしてだろう。

 なぜか、なぜかとてつもなく嫌な感じがする。


「あたしが、あんたを好きでデートに誘っているんじゃなくて!」


 これは、まさかとは思うが、


「あたしの友達があんたの友達のことを好きで!」


 待って、待ってくれ。これ以上聞きたくない。


「誘う勇気がないって言うから、それじゃあダブルデートをしようってあたしが言い出したんだ!」


 中学のあの三年間を繰り返したくない。


「だから、あたしとあんたのデートは振りで」


 俺は、俺は高校から……! 高校からは!


「協力してほしいんだよ」


 自分の幸せを掴みた、


白石健斗しらいしけんとが好きなあたしの友達のために!」


 かァァァァァ!!

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