だぶるでーと
@chauchau
第1話
「もッ! ……もう一回、言ってもらえない、……かな」
下駄箱のなかには一通の手紙。放課後、校舎裏に来てください。
「だ、だから!」
逸る気持ちを押し殺し、向かったその場に居たのは同じクラスの女の子。
「う、うん……!」
いつも教室で明るい笑顔を浮かべるその子は、見たこともないほど顔を真っ赤に染めて、
「あたしと、デートしてほしいのッ!」
もう一度、俺に必死で叫んでくれた。
おっす、みんな! 俺の名前は
いきなりだが聞いてほしい! そう! 俺は!!
彼女が欲しい!!
もうどれぐらい欲しいかと言えばもうめちゃくちゃ欲しい! ただただ欲しい! すごくモテたい! 最近流行りのパソコン小説の主人公くらいモテたい!! 馬鹿みたいにモテたい!! うぅんとモテたい! だがしかし! 畑にあるのはかかし! 俺はどこぞの主人公どものように色んな女の子に手を出すなんて舐めた真似は絶対にしない! 愛ってのはよォ……、生涯たった一人の女に誓うものなんだ! 決まったァ!!
当然だが俺は女の子はみんな好きだ! どんな子にだってその子にしかない魅力があると思っている! 男に生まれた以上女の子の魅力に気付けないようなやつにはなりたくもないしなる気もない! だがそれでもだ! あえてッ! あえて言おうではないか!
諸君! 俺はッ!!
スポーツ少女が好きだ!!
いや違う! 好きなんてものではない! はっきり言って愛している!! スポーツに励むその姿にもう俺はメロメロどっきゅんだ!! どれくらい好きかって言えば幼稚園の時から今まで毎年初詣で願うことは、スポーツ少女と恋仲にしてほしい一択だ! いいか、一択なんだ!!
当然の流れであるが、俺はスポーツ少女との甘い甘い学園生活を送るために頑張った! それはもう頑張った! 中学では陸上部に所属して、三年生では200m走で県大会準優勝にまで行くことが出来た! え? 準優勝で威張るなって? ……その通りだ!! すまない……! 本当にすまない! みんなの言う通りだ! 俺は実に情けない……! それでもここで立ち止まるわけにはいかないからまだ頑張る! ありがとう! みんなの応援が力になる! ありがとう!!
でもォォ!! モテなかったんだ!! もう、ちょっと引くぐらいモテなかった! 先輩にも同い年にも後輩にももうびっくりするくらいまったくもってモテなかった! なんだこれ、泣くぞ!
だがそれでもだァ! だからこそ、俺は高校生活に全てを賭けた! そして……! 今日! なんとッ! なんとォ!!
冒頭の台詞に繋がるんだ!!
みんなァ!
ご唱和ください!!
この世の春が来たァァァ!!
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