第252話 作戦失敗?
シュンとユア、ユナは、カーミュの"杖"に従って進んだ。
おかげで、先を行く人形とは別の道を進むことになった。途中、人形が攻撃をしてきたので破壊した。
意識して道を外した訳では無い。ただ、"杖"の指し示す方へ、最短距離を進んだ結果である。
ひどく狭い通気口のような場所を潜ったり、円筒形の柱の中を垂直に落ちたり、時には道のない場所に道を作ったりしながら、何処とも知れない場所を突き進み、行く手を塞ぐ丈夫な壁を破壊した。
そこに、ずらりと人形が並んでいた。
案内に現れた人形とは違う、盾と銃器を装備した大柄な人形が横一列に並んでいる。
「動かないな」
シュン達が姿を見せても、人形達は動かない。
『魂が眠っているです』
カーミュが姿を現した。
シュンは、試しにポイポイ・ステッキで人形を収納しようとしてみたが、どうやら"生きている"状態らしく、収納できなかった。
「その魂の場所・・容れ物は決まった場所にあるのか?」
シュンが問いかけると、カーミュがふわりと飛んで人形の襟首の辺りを指さした。
『ここなのです』
「そうか」
シュンは、"
それから、もう一度、ポイポイ・ステッキを触れる。
「今度は・・収納できるな」
首を斬った後なら収納できるようだ。
ユアとユナにも手伝わせて人形の残骸を収納する。
「こっちも怪しい」
「この筒も」
ユアとユナが壁際で淡く光っている円筒形の棒を収納しようとする。
しかし、収納出来なかった。
「カーミュ?」
『その中に、眠った魂がいっぱい入っているです』
「・・らしいぞ」
シュンはユアとユナにカーミュの言葉を伝えた。
途端、2人が跳び上がって逃げ出し、シュンの背後へ駆け込む。
『魂を縛り付ける道具なのです』
「よく、こんな物を思い付くものだ」
シュンは"
『魂が飛んでいったです』
カーミュが満足そうに頷いた。
「これが・・機人なのか?」
シュンは眉を
「どうして、ここへ放置している?」
シュン達が攻め込んで来ているのだ。兵として動かすべきではないか? 何故、こんな場所へ待機させているのか?
「休憩してた?」
「交替で睡眠?」
ユアとユナが、壁の一部を触りながら、うろうろと何かを探している。
「開くのか?」
「う~ん、たぶん・・」
「ここだけ薄い感じ」
2人が壁をぴたぴた叩く。
「開けてみよう」
シュンは、テンタクル・ウィップを伸ばして壁に突き当てた。破砕音が鳴って壁が陥没し、すぐに触手が壁を貫いて向こう側へと抜けた。
軽く手応えを確かめ、シュンはテンタクル・ウィップを引いた。
派手派手しい破砕音と共に、壁一面が引き剥がされて倒れた。
「扉を開けるために、壁を開けたでゴザル」
「きっと建て付けが悪かったでゴザル」
シュンの背中へ退避していたユアとユナが、ひそひそと囁き合っている。
「通路はあれか」
シュンは人が通れるほどの開口部を見た。
「上も通れそう」
「
ユアとユナが指さしたのは、天井近くに開いた丸い開口部だった。幾本もの細い管が束になって通っているが、身を屈めれば通れそうな隙間がある。
2人は、あそこを通って行こうと言いたそうだが・・。
「隠れて進む意味があるか?」
この部屋に居ることも、何をしているのかも、全て把握されているはずだ。今も派手な騒音を立てたところだ。身を隠す行動に意味を感じない。
「潜入の美学?」
「潜入の常識?」
ユアとユナが小首を傾げる。
「これだけ派手にやっているんだ。潜入になっていないだろう」
シュンは、苦笑しつつカーミュを見た。
「方向は?」
『こっちなのです』
やや斜め前方をカーミュが指さした。
「あまりに反応が薄い。少し刺激をしてみようか」
シュンは"
「ちょっ・・ボッス、待ってぇ!」
「ちょっ・・ボッス、待ってぇ!」
ユアとユナが、大急ぎで防御と継続回復の魔法を重ね掛けしていった。
「テロスローサ」
シュンの呼び掛けに、待ちかねていたかのように大剣が白銀の輝きを帯びて震動を始める。
やがて、
キュイィィィィーーーー・・
甲高い高周波音が鳴り響いて、小さな雷光が周囲へ奔って弾け始めた。
やや時間を置いて、シュンは静かに"
無音の衝撃が前方へ向けて放たれ、前方一帯が視界から消える。
爆発音も何も無い。
ただ消失していた。
「乙女の肌がこんがり・・」
「自慢の黒髪がこんがり・・」
シュンの後ろで、ユアとユナがぶつぶつ言っている。2人とも傷一つ負っていないのだが・・。
ヴィィー・・ヴィィー・・ヴィィー・・
全魔王種に告げる!
忌々しい神の使徒によって"死霊の王"が殺された!
戦いに備えよ!
防備を怠るな!
仇敵は強大なり!
脆弱な人や獣を喰って満足するな!
全ての魔王種よ、さらなる高みを目指せ!
ヴィィー・・ヴィィー・・ヴィィー・・
今の破壊光を浴びて、魔王種が斃れたらしい。
「・・おぅ、虫が入り込んでた?」
「・・おぅ、虫の巣になってた?」
「・・死霊が死ぬのか?」
死んだから死霊になったのではないのか?
『死の国へ旅立ったです』
カーミュが澄ました顔で告げた。
「そうか」
シュンは小さく頷いた。理屈は分からないが、カーミュが言うのなら、そういう事なのだろう。
徒労・・そんな単語が脳裏を過ぎる。
こんなことなら、異界神を探そうとせず、移民船を片っ端から破壊してしまえば良かったのではないか? 最後まで判断に迷った結果だったが・・。
「ここまで時間を掛けて、魔王を狩っただけではな」
「サクッとやっちゃいますか、ボス?」
「サクッと消しちゃいますか、ボス?」
ユアとユナが、ルドラ・ナイトの紋章を握って見せる。
「そうだな・・カーミュ、杖はまだ反応を?」
シュンの問いかけに、カーミュが頷いた。
『こっちなのです。動いて無いのです』
"
「あの破壊光に耐えたのか?」
「ちょっと尊敬する」
「さすが神であるな」
ユアとユナが感心したように呟いた。アルマドラ・ナイトの時より威力は低いが、それでも直撃をしたらユアとユナでも防ぎ切れないかも知れない、高威力の破壊光である。
「・・向こうが動かないのなら、こちらから行ってみよう」
予想を上回る強敵かも知れない。
「場合によっては、ナイトを出すぞ」
「アイアイ」
「ラジャー」
ユアとユナが敬礼をした。
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