第8-1話 新しい変身
「すまない、脳天気な聖菜の顔を見てたら…」
昼休みの屋上、静馬は朝の行動に平謝りした。
購買で買った1日限定20個のプリンを謝罪の品として差し出して。
「静馬の時、弱味を握られてたからな、それが1番の反発暴走の原因だろ」
「う…」
「メジャーな隠し場所にするからだ」
「反省してます」
「何の話?」
プリンを食べて機嫌を直した燐里は素直に問うが、男たちは視線をそらして答える。
「…燐里は知らなくていい事だよ」
「お前が知るにはまだ早い」
「静馬と同い年なんだけど」
話が進まないので、針田は自分のデザート用にとっておいた豆大福を渡して燐里を黙らせてから、新たなる不安を静馬に指摘する。
「問題は、このネタを聖菜が『燐里に話す』と脅してくる可能性が高い。静馬での聖菜制御は厳しくなってきたな」
「うん…。で、俺、考えたんだ」
静馬の視線は、大人しく食べている燐里に向く。
「今、俺が聖菜と対等にやり合えるのは、ましず になった時だけど、魔法少女の格好でウロつくのはマズい」
「そうだね」
「だから、ましず になろうと思うんだ」
「へ?」
「ましず として、魔法少女以外の服装になれば、普通に街中をウロつける」
「えーっと」
少し回りくどい言葉に燐里に対し、針田はさらりと言った
「つまり男の娘だな」
男の
娘のようにしか見えない容姿と内面を持つ男性のこと。女装も指す。
「ウィッグとスカートを履けば、できあがりだと思ってた」
全身鏡の前に立ち、魔王族の欠片を使わず ましず に変身した静馬は過去を振り返る。
ここまで1か月かかった。
「洗顔や化粧水と乳液のスキンケアの重要性から学び、無駄毛の処理に眉を整えて、メイク」
「メイクデビューを見事に失敗して、膝を抱えてた時はどうなることかと思ったけれども」
「そんな事もあったね…」
ましず は過去を思い出し空よりも遠くを見たが、すぐに視線を戻した。
「男の娘は1日にしてならずって、サイトにも言ってた通りよね。
あの後、燐里に100均で練習用コスメを買ってきてくれたから、練習して。もちろん、親や聖菜に見つからないように」
ましず はメイクの出来を見ながら、指先でつけまつげ に触れて落ちないか確認する。二重になるアイテムを装着したので、目が大きくより娘らしくなった。
「週3のバイトは変身前からやってたけれども、今月のバイト代全部コスメと服に回して……長かった」
「1か月でも早かったと思う、頑張ったな。魔法セキュリティーも含めて。
というよりアプリだと高額になる魔法をふんだんに使ってくれたな」
その1か月、燐里の住み家を往復しているわけだが、聖菜に見らる事のないように対策魔法もしっかりと使っていた。
「分身の魔法をかけてから、本体は姿消しをかけて浮遊飛行。魔法の使う力も鍛えられたよね」
「ましず の場合、想像力が魔法の力となるから、良い向上になる」
針田は黒のフレアスカートと白いシャツの服装と全身を眺める。きゃしゃではないが細身なので違和感は感じない。
ちなみに衣装などのグッズはネットで購入し、針田&燐里宅に届けてもらった。
「…ふむ」
針田はもう一度、ましずを確認してから、さらりと言った。
「じゃあ、ミッションを出しておこう。
電車に乗って一駅先にあるゲーセンでプリクラを撮ってこい。燐里は付き添いな」
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