第7-3話 vs 幼なじみ
「本当? 嬉しいわ、燐里ちゃん」
聖菜は、にっこりと微笑んだ。学校の女神様と呼ばれるのが分かるほどの微笑みだった。
『良かった。聖菜を怒らせる発言じゃなくて』
「じゃあ、今ここで永遠の愛を誓いましょう」
女神様の微笑みが崩れた。
「あれ?」
笑顔のままだが、目が獲物を見つけた肉食獣のように光った。
「燐里、正気なの?」
ましず は悲鳴のような声を上げたが、突進してくる聖菜に気づくと、燐里の腕を引っ張って後退させる。
その直後、まるで車のように、人間とは思えない速度で駆けてきた聖菜が燐里の真横を通り過ぎて行った。
「えーっと、どういう事? 2人のやりとり聞いてなくて」
「やっぱりね。
聖菜は『愛があれば、一夫多妻制はOK』かって、聞いたのよ」
「え…」
軽く発言したために起きた言葉の恐怖に、燐里は青ざめた。
「じゃあなんで永遠の愛を誓うことになるの?」
「一夫多妻制がOKなら、聖菜の愛も受け止めた事になるという、勝手な考えよ」
「大丈夫よ、燐里ちゃん。2人のハニーのためなら、年収5億を超す大企業のCEOに上りつめてみせるわ」
猛スピードの足を止めた聖菜は、開き直りの言葉を返すと、再び駆けだしてきた。
「逃げるよ、燐里」
ましず は燐里の手をつないで逃げようとしたが、燐里はするりと避ける。
「待って ましず。その姿で学校内を走り回るのは目立ってマズいと思うし、ホームルームに間に合わなくなる」
「う…」
「私が盾になる。聖菜から見えないように魔法を使って」
「え、でも、危険すぎる」
「大丈夫。ましず を信じてるから」
「燐里…」
燐里の笑みと、爆走してくる幼なじみに ましず はうなづき、リコーダーサイズの魔法発動棒を構える。
「…………」
ましず は考えた、聖菜に魔法をかけたと分からないようにするには、時間を止める『ストップ』をかけて、安全な所に移動してから解除すれば良いと。
「燐里ちゃーん」
微動だにしない燐里を見てハグを受け入れてくれたと判断した聖菜は、両腕を広げ燐里を抱きしめる準備を始める。
「……」
そんな聖菜の顔を見て、ましず はカチンときた。
さんざん暴走に振りまわされ、さらに弱味を握られた後だからだろう。
ましず は棒を構えるのをやめ両腕を燐里に回し、抱き寄せた。
「へ? ましず?」
予想していない行動に驚く燐里の頬と自分の頬を軽くくっつけてから、視線を聖菜に向ける。
「燐里は渡さない」
聖菜の爆走する足が止まる。止められたのは、ましず の恋愛宣言と、ライバルとしての敵意を持った目に気づいたからだろう。
「…。良いでしょう、ましず。受けて立ちますわ」
チャイムの音が新たなる戦いの合図となった。
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