第5-2話 日曜魔界魔法相談室 前編

「今週も始まりました。

元気な質問、疑問お待ちしております…って、何これ」


 燐里は手渡された紙の文章を読み上げてから、針田に苦情を言う。


「何って夏休み魔界子供科学相談室 改め日曜魔界魔法相談室の台本だ」

「電話相談室?」

「知らんのか?長期休み中に、子供達が出すストレートで時にマニアックな疑問を、専門家が優しく深く答えてくれるラジオ番組だ」

「魔界にもあるんだ。人間世界と変わらないんだな…」


 通話に切り替えた静馬は、驚きの声をあげた。

 針田のスマホは机の上に置かれ、りんりにも聞こえるようにハンズフリー状態にしてある。


「え…知らないの私だけ?」

「そう言う事だ。

 さっそく今後の対策を電話相談室にして始めよう。燐里、台本」

「はぁい。

 さっそく最初の相談にまいりましょう。おはようござまーす。お名前と学年。どこからかけているか、教えてください」

「静馬です。(高校)2年生です。人間世界に住んでいます」

「人間世界の静馬君ですね。

 静馬君の質問を教えてください」

「はい。魔法がつかえるようなったけれども、魔法ってどんな魔法があるんですか?」

「どんな魔法があるか、ですね。これは魔法専門の針田先生、お願いします」


 質問する静馬の口調は小学生らしく変わり、答える専門家役の針田も、落ち着いた優しい声で、まず静馬に質問した。


「静馬君は、どんな魔法があると思う?」

「うーんと、ゲームでやったことはあるけれども、炎とか、氷とか、4属性の攻撃魔法。攻撃力や素早さを上げたり、下げたりする補助魔法。傷を治したり、解毒する回復魔法。あと、ドラゴンとか呼び出す召喚魔法」

「静馬君は詳しいんだね。まさしく、その通りだよ。

 攻撃、補助、回復、召喚。大まかな魔法は静馬君が言った通りだね。

 魔法は何百もの魔法があるから、全部読み上げるだけで番組が終わっちゃうんだ」

「そうなんですか」

「沢山あるから、先生やお友達に聞いてみるといいよ。アドバイスしてくれるから」

「分かりました。ありがとうございます」


 静馬は通話を切らずに無言にして、最初の相談を終えた状態にした。


「………」


 燐里は、台本に目を向けると『相談の感想を一言言ってから次の質問と書かれていた。


「…えーっと、魔法は奥が深いですからね」


 針田は、燐里のコメントに不満な顔をしたが、次の質問に進めさせる。


「それでは続いて、次のお友達です。おはようございまーす」

「おはようございます」


 静馬も乗り気なのか、声は少し高めになっていた。


「ましずです。東京に住んでいます」

「東京?…ですか」


 知らない地名に針田はADのように紙に『人間世界の首都名だ』と情報を送った。

 うなづいてから、燐里は司会を続ける。


「ましずちゃんは何年生ですか?」

「1年生です」

「では、質問をお願いします」

「はい。友達がスマホから魔法を使っていたのですが、魔法は機械でも仕えるのですか?」

「魔法は機械でも使えるか、ですね。ハリーダ先生、お願いします」

「はい。ましずちゃん、友達がスマホから使ってたんだね」

「うん。友達の保護者の動物さんが、その友達は2つしか魔法が使えないって言ってたのに、スマホから別の魔法をたくさん使ってたんです」

「そうなんだ。

 実はね、ある魔族がアプリで魔法を発動できる技術を見つけて、誰でもお金を払えば使えるようになったんだ。

 ただ、攻撃とか乱用したら大変な魔法は、アプリには載せていないよ。あと、強い魔法は、値段を高めにしたり身分証明が必要だったりと、魔界が混乱できないようにもしているんだ」

「ふうん」

「アプリの他にマジックアイテムがあるけれども、これは、付加できる魔族がかなり制限されているから、簡単には手に入らない。

 だからアプリがなかった頃は、自分が持っている魔法だけしか使えなかったんだよ。

 一般の魔族は5つの魔法か耐性。耐性というのは、例えば『毒』の魔法をかけられても効かなかったりするんだ」

「ふうん。そうなんですか。分かりました、ありがとうございます」

「ましずちゃん、ありがとうございました。

 因みにマジックアイテムが付加できるのは、魔界の王族。それと魔王族が許可した一部の魔族に限られています」


 補足した所で、燐里は針田が追加した台本を読みあげる。


「ここで気象と交通情報の時間です。

 質問のお電話は、まだ受け付けています。番号を間違えないようにお願いします…って、これ読む必要ある?」

「大ありだ。CMのない所は、ここ小休憩をとり、後半の準備を進めることができるからな」

「…良く分からないけれども、後半に続くって事だね」


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