第1話 衝撃
操縦桿を訓練時と同じようにゆっくりと片手で引いていき、完全に滑走路から飛び立った後、ブリーフィングの際に言われていた事をふと思い出した。そういえば非戦闘区域から酸素エリアーへと突入した時に衝撃が来ると言っていたがどうしたら――――――
「アキラ、そろそろ衝撃が来る。コクピットの密閉をメーターがセーフエリアを指したら一定値まで酸素を供給できるように調節したらS.R.Fを起動しろよ、でないとその分突入時の衝撃が激しくなる。訓練では実際に突入をしたわけじゃない、気を引き締めておけよ、『新米』。」
「本番は練習だと思ってやる、そして練習は本番だと思ってやる。僕もそうしてきたつもりです。ダミアン教官、あまり見くびらないでください。」
そう言って突入時にも耐えるため、機内の無線を半ば怒り任せに切った。教官は僕がこの機関に拾われるようにして入った時から様々な事を教えてくれた人だ、だけどあまりにも僕の事を信用しなさ過ぎていると前から少しずつ感じるようになってきた。だから、時には抑えが利かなくなって言い争いになってしまう事もよくあるけど、何も知らなかった僕を助けてくれた恩人だ。まあ、親がいない僕にとっては本物の父親だと思っている。だからこそ、成長ぶりを、成果を、教えてあげたいんだ............
ダミアン教官から無線が入ってからしばらく経った後、衝撃に備えろ、という警告板が見えたので本格的に衝撃に備え始めた。しかし始めての事は誰しも緊張するもので.........僕も内心はとっても怖かった。しかし、いつまでも時は待ってくれない。そんな事を考えている間にもう目の前までそれは来ていた。
数秒間の間機体全体が前後に揺さぶられる感覚を味わった後、無線が自動的に起動しダミアン教官率いる迎撃部隊は目視で確認出来うる距離まで接近していた敵部隊へと切り込むようにして突入していった。僕もそれに頑張って着いていった。するとやかましいブザーと共にダミアン教官の声が機内に響いた。
「いいか、今回は正面から攻め入る。俺と二番機で敵の隊長機をやりに行く。その間三番機は援護を頼む、そして残ったメンバーは撃ちこぼしをやれ。それでは各自配置に着いてくれ。」
その言葉の後の了解、という言葉を合図に隊はばらけていき、僕は自分の役目である撃ちこぼしを狙いに行った。今回の敵の機体は搭載燃料の少ない短距離戦闘用のものだ。隊長機は標準機よりも特殊なうえ、強い。なので僕は量産型の機体を狙いに行く。そうこうしていると前方から敵機がやってきた――――――
「これが......本当の戦闘なのか........!」
あれだけ強気でいたがいざ本番となると厳しいものだと思う、そして何よりも受け入れがたいことは自分が人殺しをやっているという事だ。しかしやらなければ自分がやられる。今は、そんな事考えている場合じゃないよね.......
そして初めての戦闘は相手の砲撃という火種によって始まりだした。
まだ数発であれば耐えられると思うが実際の戦闘では数値なんてものは全く役にはたたない。内心まだ死の恐怖に怯え、震えていた手で舵を取り、急上昇し始めた。なんとかして後ろを取らなければ.........相手も自分に追いつくために旋回してからこちらに向かってくるつもりだ。その前に後ろを取ることが出来れば.............訓練のようにやればいいんだ、相手はCPUだと思ってやればいい。なんだ、それだけの事じゃないか。そう考えているうちに素早く想定通りにやることが出来た。よし、このまま後は機銃の引き金を引くだけだ、引けばいい。そうして僕は新米用に付けられている安全装置を外し、目の前をふらふらと飛んでいる機体めがけてがむしゃらに撃ち続けた。すると機体は数秒間稲妻を放った後、爆発した。そのままなら良かった。だって、敵の体が機外に放り出された後爆発四散し、自分の機体に血という名の体液をぶちまけていったのだから―――――――――
「嗚呼、僕は、人殺しを、したんだな..........」
しかし、そんな事を考えている暇なんて戦闘という荒波の中では出来るはずが無い。僕はしばらくの間放心して、何もできなくなっている所を狙われ、ふと気づいたときには無線から放たれる同僚たちの叫ぶような言葉と機体の左舷方向から刻々と近づいてくる敵機に気づいたときには目の前が真っ白になって........気づくと僕は無機質な天井を見上げていた。
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