時空戦士アキラ

糸井 康彰

第0話 記憶の狭間に

 人は一度や二度、いや、それ以上に何度もこの退屈な現実とは別の世界があってその世界で冒険や戦い、またはゆったりとした安息の日々を暮らしたいと思ったことがあるだろう。そしてそんなものあるわけが無いと言われ、普段なら夢物語と思ってここで考えるのを止め、普段通りの生活を送っていくだろう.....しかしだ、そういった要するに別世界というものは科学的に証明されている物ではないしこの世の中あるはずが無いと昔は言われていたが今では当たり前になっている事さえある。つまり、われわれが生きているこの現実以外にももう一つの「現実」があるかもしれない..................








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...................では次のニュースです、先月気象庁から発表された突発的な異常気象について新たな情報が入りました。気象庁によりますと異常気象は近年の科学技術による異常な量の廃棄ガスによるものであると二時間前の会見で発表されました。気象庁は明日から原因の解決へと進んでいく模様です.......ではお天気の方を.......』




 ニュースラジオを聴きながら書類整理に普段通り励んでいると突然静寂な空間に電子的なやかましい着信音が業務用の固定電話からけたたましく鳴り響いた。慌てて僕はラジオの摘みを絞り受話器を手に取った。




 「もしもし、.....あー、今回はどのようなご用件でしょうか。」




 「お宅の所の電子呼び鈴を買って、それで取り付けてもらったんだがな、いかんせん調子が悪くてな。もう一度来てもらって確認してもらえないか?」




 呼び鈴、かこないだ設置したやつだな.......他の同業者の間でも不良品が多いとか聞いていたからあの会社のは使わない方が良いかもしれないな........




「事情は分かりました.......あー、何時ぐらいに訪問してもよろしいですか?」




 「そうだな、今日は空いているから今日来てもらえるとありがたい。」




 よりにもよって今日か........仕方ないな、また裁判おこすなんて脅されたらたまったものじゃない.....今から車を出すか.........




 「分かりました.......二時間後には向かいます......」




 「それじゃあよろしく頼む。」




 そこで通話は切れた。この仕事に着いてからの事まだあまり時が経っていないせいかまだまだ不慣れだ......取り敢えず、大事な顧客だ。今すぐに向かおう。




 作業着の上からジャンパーを簡易的にはおり、戸締りをしてから自分にあてがわれた部屋を出て鍵を取りに受付に向かった。この頃はこういった不良品の多い時代なものだからその不良品回収専用の職もあるものだ。どうやら壊れやすくして買わせる意欲を沸かせているだとか言っているのがいたが仕事があればいいんだ、そんなことは気にはしていられない。そうして感慨にふけっているといつの間にか受付に着いていた。




 「どうしました、アキラさん、アレですか?」




 「あー、そうだ、普段どうり三番車を貸してくれ。それで、今回のガソリン代は?」




 「どうやら懐がきつそうですが今回は経費では落ちませんね、途中で入れて来てください。」




 「.................そうですか、じゃあ四時間後には戻るので。」




 そういって鍵をもらって駐車場へと向かった。それにしてもまたガスは自分持ちか......これじゃあ一向に金なんて溜まるわけないよな..........そう思いながらドアをひったくるようにして開け、乗り込んだ後はけだるそうにしてペダルを踏みこみ、車を出した。すると何かピンが抜けるような音が聞こえ、一瞬のうちに車内が得体の知れない煙幕に包まれたんだ。




 そして何かに引っ張られて.......僕は、僕は.............








 「...........おい、アキラ。いきなり気絶するもんだから驚いたぞ......」




 「あ、ああ。眠かっただけさ.....心配されるほどの事じゃないさ。」




 今の記憶は......何か思い出せそうなのに、毎回あの場面、あの場所で終わってしまう。でも、あれは僕の記憶の中でとっても大事な........




 「しっかりしてくれよな、もうすぐ初任務なんだろう.....気張って行けよ。」




 「そんなに気にすることはないさ、適正テストやヴァーチャル訓練ではほぼ満点なんだから........」




 そうだ、実戦はどうかは分からないけど一般人が出来ることは全部やったはずだしきっと上手くいくはず――――――




 「本当の怖さを知ったら、そんな事言ってられんだろうさ.......」




 「なら、僕は一般人あがりなりに違うって教えてあげますよ。」




 「そうか........」




 それからはダミアン教官は黙ったままだった。もちろん、その意味も知らずに。




 「おい、着いたぞ。次の仕事もあるから早めに降りてくれ。」




 しばらくすると輸送車は滑走路に着き、ドライバーに半ば追い出されるように車から降りそれぞれの機体へと乗り込んだ。そういえば知り合った整備士が二本のジェットで飛ぶ飛行機、だなんて言っていたがそんなものよりもこのS.R.F機構を兼ね備えた零式改に勝る機体なんて無いのにな、と言ったことを思い出した。




 機体に乗り込むと早急にブザーが鳴り響き、やかましいノイズと共に無線が入ってきた.......




 『これよりAS迎撃任務を開始します。隊員は離陸体勢に入って下さい.....』






 その声を合図にエンジンのスロットルを最大に上げ操縦桿を引いた.........
























 




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