令和

エリー.ファー

令和

 発表します。

 これから、発表します。

 本当です。

 皆、集まってきてください。

 ねぇ。集まってよ。

 新元号発表するよ、本当だよ、嘘じゃないよ。

 みんなー。

 来てー。

 なんで、無視するの。

 ねぇ。

 持ってるよ、画用紙にマジックで、ちゃんと新しい元号書いてきたから皆、早く集まってよ。画用紙の上の部分がぺらってなっちゃって、見えちゃうかもしんないから、早くして。

 お願い。

 なんで、来ないの。なんで、みんな、来ないの。

 ねぇってば。

「みんな、聞いてあげて。バカがなんか言ってる。」

 ちょっと、待って。

 今の、何。

 バカって言った。

 言ったよね。

 聞いてたんだけど。

 嘘だよね。さすがに。露骨すぎない。

 バカはないよね、さすがに。

 バカは。

 違うよね、聞き間違えだよね。絶対違うよね。

 え。

 なんで、みんな目、逸らして笑ってるの。

 え、そうなの。

「言ってない、言ってない。」

 あ。

 だよね。

 良かったぁ、本当に良かった。

 うん、じゃあ、今からみんなに発表します。

 新しい元号発表するから、はい、カメラ回してください。記者の皆さんは、この黒い椅子のとこにちゃんと座ってください。で、ここが記者の皆さんが近づくことのできる最低ラインです。この白いガムテープのとこを踏み越えてきちゃだめです。それをやられると、出禁になってしまうので、やめてください。

 良いですか。

 分かった人、はーい。

 みんなぁ、もう、ぜんっぜん声出てない。それじゃあ、やる気でないよ。元号発表しないよ。いいの、みんな困るよ。どうしよう。五月だから新元号だけどなんなのか分からないから、困っちゃうよーってなるよ。いいの。

 駄目でしょ。

 やるよ。

 だから、ほら、ちゃんとやって。

 はい、行きます。

 分かった人、はーい。

「うっせぇ、バカ。」

 誰。

 誰言ったの。

 なんで。

 なんでなの。

 なんで、官房長官のことバカにするの。

 なんで、バカにするの。

 どうして。

 官房長官のあたしが、まだ小学生だから、みんな舐めてるの。

 そういうこと。

 もう、いいじゃん。

 総理大臣が任命したときにも、その下り、散々やったじゃん。ずるいよ。こういう時にそうやって蒸し返すのずるい、ずるい。

 いっけないんだぁ。

 もう、終わったことなのに。

 何度も何度も言ったりしちゃあ。

 いっけないんだぁ。

 あれでしょ、本当は、あれでしょ。

 みんなも、これ、めくるのやりたんでしょ。本当はこれめくってパシャパシャしてほしいんでしょ。社会の教科書に顔ごと載りたいんでしょ。

 残念でしたぁ。

 あたしでーす。

 あたし、顔、載りまーす。

 みんなは、絶対に乗りませーん。

 みんなは、日本の歴史に一生、顔の残らないタイプ。あたしはもう、この日本の歴史にちゃんと名前を残すことのできるタイプ。絶対間違いありません。

 もう、ここでっ、このっ、このラインで、もう人生が決まっちゃってまーす。皆さんはもう、ずっとそっちの人、あたしはもうずっとこっちの人、一生交われません。

 あたしの言葉のおこぼれを書いて、記事にして、お金にする貧乏人の皆さんに、今から、新元号発表しまーす。

 良かったねぇ。

 発表してもらえてみんなは、良かったねぇ。

 嬉しい人。

 はいっ。

 嬉しい人。

「はーい。」

 新元号知りたい人ー。

「はーい。」

 もう、しょおがないですなぁ。

 うへ。

 うへへへ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

令和 エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ