第9話

私は迎え人のナナシです

今日は転落事故で亡くなった女性を迎えに来てます

転落した場所で

何かを探している女性に近付き

「貴女を迎えに来ました、迎え人です」

女性はこちらに振り返り

ナナシの目の前まで来ると

「私の赤ちゃん知らない?」

「赤ちゃんですか?」

「そう、赤ちゃんよ、知らない?」

「残念ながら知りません」

女性は顔を下に向け

「そう、知らないの」

「もしかしたら、生きているのでは?」

女性は勢いよく顔を上げ

「そうよね、生きているわよね、よかった、私はそばにいれないけど、きっと主人と一緒に生きてくれるわよね?」

「そうですね、それでは行きましょうか?」

「えぇ、行くわ」

この女性は

死産のショックで

居ない赤ちゃんを育ていたのです

私は今日も迎えに来ました

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