第10話

私は迎え人のナナシです

今日は自殺をした女性を迎えに来ました

私は自殺現場に立っている女性に近付き

「貴女を迎えに来ました、迎え人です」

女性は振り返ると

ニコッと笑い

「やっと来てくれたのね、待っていたわ」

私は顔を傾け

「待っていたですか?」

「えぇ、そうよ、貴女は繋ぎさんなんでしょ?」

「繋ぎさんではありません、私は迎え人です」

「迎え人って?」

「迎え人と言うのは死んだ方をあの世へと迎えに来る人のことです」

「ふーん、私行かないわよ」

「どうしてか、聞いてもいいですか?」

女性は微笑みながら

「良いわよ、私には大好きな人がいるの、でも、その人には恋人が居て、私とは付き合えないと言われたの、私の方があの女より愛しているのに、あの女さえ居なければ、最初は女を殺そうかと思ったんだけど、そしたら彼とは長い時間離れることになる、それは絶対に嫌、それでどうしたら良いか、考えていたら、繋ぎさんの噂を聞いたの」

「どんな噂ですか?」

「十二時丁度に死んだ人間は繋ぎさんによって、誰かと繋がることが出来る、それを聞いたときはこれだと思ったの、だって死んだ後も好きな人と繋がってるなんて素敵じゃない」

うっとりとした目で虚空を見つめている女性の前に

1枚の紙とペンを手渡した

「それではこちらに署名と捺印をお願いします、捺印は名前の横にどの指でも良いので押し当ててください」

「この紙は?」

「そちらは簡単に言いますと迎えを拒否しましたという書類です」

「じゃあ、これを書いたら行かなくても良いの?」

「はい、行かなくても大丈夫です」

「じゃあ、書くわ」

女性は書類に署名、捺印をして

ナナシに手渡した

「確かに受け取りました」

「じゃあ、私は行ってもいい?これからずっと永遠に一緒に彼といれるのね、私以外の女を見ないようにさせないと」

女性は去っていった

私は今日は迎えない

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