第88話

 授業がすみ、みんな揃って秘密基地に向かう。

 途中のベーカリーで銘々が昼飯代わりにハンバーガーやホットドッグを確保する。よほど腹が減っていたのか、店を出るか出ないかのうちに、健太がハンバーガーを頬張ると、それを見て正人と康彦もまねる。

「ちょっとォ、やめなさいよ。歩きながら食べるのは学校で禁止されてるでしょ。先生に見つかったらどうするのよ」

 巻き添えを喰うのが嫌な愛子は、真剣な顔で訴える。愛子に負い目のある3人は、渋々食べてるものを袋になおした。

 金太には気になっていることがある。ネズミだ。まったくということはないが、このところ大基と話すことが多くて、まともにネズミと遊んでやったことがない。しかし、それももう少しで夏休みに入る。そうなったら1日中魚釣りやセミ取りに付き合ってやろう、それまでもう少しの我慢だ、と自分に言い聞かせる。

 みんなは小屋に入ると、机の上に学生帽とカバンを重ねて置き、口をきくこともなく汗の顔で昼飯をパクつきはじめた。どこから聞こえるのか、油ゼミの声がわずらわしい。

 金太はハンバーガーを急いで食べ終えると、袋に入っていた紙ナプキンで口元を拭ったあとで、

「みんな、食べながらでいいから、ちょっと聞いてくれないか。みんながちからを合わせたお陰で、大基くん救出作戦はほぼ成功したと思われます。まだ油断することは禁物ですが、とりあえずのところは脱出することができたようでーす」

「うおーッ」

 申し合わせたかのように小屋が震えるほどの雄叫びが上がった。 

 報告する金太も嬉しそうだったが、それ以上に大基のほうがこれまでにない笑顔を見せている。

「うちのトウさんに、作戦が成功したかもしれないって話したら、行動に移した時期がちょうどよかったんじゃないかって言ってた」

 金太は勝ち誇ったようにみんなの顔を見る。

「行動した時期?」

 と、大基が小首を捻った。

「そう。だって、これから長い夏休みに入るだろ。夏休みっていうのは、非行に走りやすいから、どこの学校も非行防止について神経質になっているから、あの手紙を見て急いで手を打ったのと違うんかなあ」

「なるほど。そういうことか……」

 大基は両腕を組み、天井の1点を見つめながら感心した。

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