第86話
そして金曜日の朝いちばんに、またしても金太のもとに近づいた大基が、
「おーい、金太、あの作戦、成功したみたいだ。これまで毎日のように呼び出しの電話があったけれど、この2日間ぴたりとやんだんだ」
と、嬉しそうな顔で報告をした。
このところ大基は毎日金太への報告を欠かさない。そのたびに明るくなっていく素顔は、これまで深く厚く被っていたものが徐々に剥がされているように見えた。
「そうなんだ。とりあえずよかったよな。そういうことなら、短縮授業ということだし、きょうみんなで基地に集まって、作戦終了の報告会をしないか」
「OK、じゃあ健太たちに連絡しとくから……」
大基はこれまで見せたことのない清々しい笑顔で言った。
2時限目の英語の授業が終わると、トイレで金太とノッポが一緒になった。
「ノッポ、そういえばこの間アイコのことをなにか言ってたよな」
手を洗いながら横のノッポに小さな声で訊く。
金太は、大基のことがようやく頭から離れたために、ちょっとだけ愛子のことを訊いてもらいたいモードになっている。
「ああ、あのことネ。ただ金太がアイコのことばどげん思っているかちょっと気になっただけやよ。特に深い意味はなか。気になったら、ゴメン」
ハンカチをズボンのポケットに押し込みながらノッポは言った。
「気になんかしてないさ」
ノッポのあっさりした返事に、金太は肩透かしを喰らってしまった。
「でも、本当はどうなん? 好いとんやなか?」
「……」
金太は黙っていた。ノッポがなにを言いたいのかよくわからない。彼のことだからそんなことはまずないと思うものの、取りようによってはもてあそばれているようにも取れた。
金太は、自分の正直な気持を話そうかどうしようか迷いはじめている。
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