第85話 4

 1週間後の月曜日の朝、大基は自ら金太のところにやって来て、

「金太、昨日あいつらから呼び出しの電話があった」

 と、ちからのない小さな声で報告した。

「で、どうした?」

 まるで仇に出遭ったかのように突然金太の眼の色が変わる。

「躰の調子を理由になんとか断わった。ここんとこずっと調子がわるくて、病院に通ってるって言ってやった」

 大基は下敷きでせわしく顔に風を送りながら言う。

「そうか。でもそろそろあの手紙の効果が出はじめるころなんだがなァ」

 金太は腕組みをして何度も小首を傾げる。

「だって、あの手紙はやっとR高校についたくらいなんじゃないの?」と、愛子。

「そうだな、まあ焦らずにじっくりとR高校の出方を見るとしよう。いずれにしても、もう少しの時間我慢すれば彼らと手を切ることができる」

 金太はよほど自信があるとみえて、えらく大人びた言い方をした。

 大基は毎日呼び出しがある、と顔をゆがめながらぼやく。それを聞いて金太はこれまで揺らぐことのなかった自信が音を立てて崩れ落ちはじめたのをひしひしと感じた。

 次の策を考えなければ――と考えていた水曜日、大基が嬉しそうな顔をして金太たちの前で、昨日ははじめて呼び出しがなかったと報告した。でも、あいつらのことだから、またなにを言って来るかわからない、とつけ加えもした。

 金太は、大基の言葉からなんとなく手応えを感じ取った。これまで多少不安があったものの、ようやくじわじわと成功の足音が聞こえはじめてきた気がした。

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