第14話
ノッポの父親は住宅機器メーカーに勤務している。20年近く福岡支店に勤めていたのだが、このたびの人事異動で東京の本社に転勤が決まった。
単身か家族ぐるみか散々悩んだあげく、まだ子供が小さいということと、たまたまノッポが小学校を卒業したこともあって、家族みんなでの転勤することになった。
ノッポにしてみれば友だちと別れるのは淋しくはあったが、親と離れて生活するわけにもいかず、渋々引っ越して来た。
新しい学校に通うようになって、はじめてイジメというものを知らされたのだ。それについていままで耳にしたことはあったが、まさか自分が餌食になるとは考えもしなかった。あまりのショックに食事も咽喉を通らなくなり、ついには体調まで崩してしまったのだ。
ノッポの家は、学校から歩いて30分ほどのところにある新興住宅街のはずれにあるマンションの3階だった。周りには似たような家がいくつも整然と並んでいる。
金太の目にはその光景が物珍しく見えた。
先生はノッポの家の前まで来ると、手にしたカバンを持ち替えてインターホンのボタンを軽く押す。くぐもった声が聞こえたあと、玄関のドアが開けられた。
「自由ヶ丘中学校、1年D組担任の安田ともうします」
先生はていねいに頭を下げてあいさつをした。
「どうも、トオルの母です。いつもトオルがお世話になっております」
ノッポのママは躰を折って深くあいさつを返す。
「きょうおじゃましたのはほかでもないのですが、このところ柳田くんが学校に姿を見せないので、なにかあったのかと心配になって寄らせてもらったのですが……」
「それは、それは、ご心配をおかけしまして、申しわけございません。立ち話もなんですから、散らかしておりますがどうぞ」
ママは家の中に入るよう先生に勧めた。ノッポのママは先生の訪問ということで、いささか緊張をしているのが金太にもわかった。
「ありがとうございます。でもきょうはクラスメイトの山井くんも一緒ですから……」
「だったら、お友達も一緒にどうぞ。なにもおかまいできませんけど」
ママは首を横に倒しながら金太の顔を捜して言った。
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